The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
第二部Ⅴ

sideルレイア

────────…この男は、馬鹿か。

「何も面白くないですよ。そんな胸糞悪い話聞かせておいて、笑える人間がいるんですか?」

どれだけ人格崩壊してたら、この話を笑えるんだよ。

俺だって相当崩壊してるけど、でも笑えねぇよ。

糞みたいな話だった。

見てみろ。アリューシャなんて、居眠りしたかったのにあまりの胸糞悪さに、微妙な顔で半目になってるじゃないか。

最初に会ったときから、何やら厄介そうなものを抱えてそうな御仁だと思っていたが。

予想以上だった。

確かにお人好しの甘ちゃんだ。俺にはとても、とても真似出来ない。

自分を裏切った組織を守ろうとするなんて。

絶対無理。

…ったく、ふざけた話だよ。

ルアリスのは、完全に理想主義の綺麗事坊っちゃんだと思っていたが。

ルリシヤのは、また質が違うものだ。ルリシヤを甘ちゃんだとは思うけど、だからって蔑むことは決して出来ない。

自分だったらと考えてしまうからだ。

もしルルシーが、そのグリーシュみたいな奴に…なることは有り得ないと思うが、もしもそうなっていたら。

…多分、俺もルリシヤと同じことをしていただろう。

そう簡単に切り捨てられるものじゃないのだ。親友って。

魂を預け合った仲になったら。

そう簡単に、諦められないものだ。

だから誰も、ルリシヤを責められない。お前の自業自得だとか、お前の甘さが引き起こしたことだとか、言えないのだ。

自分が同じ立場だったら、どうするか。

考えただけで、薄ら寒くなるというものだ。

それに、ルルシー、アイズ、アリューシャの三人は…俺が帝国騎士団に裏切られたとき、どうなったか知っている。

シュノさんとアシュトーリアさんも、俺の手首に傷があることを知っている。

実際、それだけ辛いことなのだ。

信じていたものに裏切られるって、そういう苦しみなのだ。

俺自身も、痛いほどよく知っている。

組織に裏切られることが、どういうことか。

それを乗り越えて、ルリシヤはここにいる。

こんな悲痛そうな…苦しげな顔をしてさ。

だから君、『青薔薇連合会』に入った今も、仮面を外さないんだな。

「…笑えねぇよ」

俺は再度呟いた。

笑える訳ねぇだろ。こんなの。

アイズレンシアがそっと歩み寄り、ルリシヤの手錠を外してやった。

少なくとも、ルリシヤは敵ではない。

『セント・ニュクス』の人間でもない。それがはっきりした今、彼を拘束する必要はなくなった。

かと言って、ルリシヤを仲間だと思って良いかについては…また、別の話になった。
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