The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…それで、ルリシヤ。あなたは今…誰の味方なんです?」

その点だけは、ちゃんとはっきりさせておかないといけない。

ルリシヤがもし、『セント・ニュクス』のことを忘れられないと言うなら。

「『セント・ニュクス』の味方なら、あなたはここにはいられない。それとも『青薔薇連合会』の味方をして、『セント・ニュクス』の殲滅に力を貸しますか」

「…」

「それとも誰の味方もせず、ここを去りますか。好きにしてください。どれを選んでも、あなたのこれまでの働きに免じてあなたを傷つけはしませんよ」

俺がこんなサービスをするのは、奇跡みたいなものだぞ。

人の過去なんて大抵半笑いで聞く俺であるが、今回ばかりは笑ってもいられない。

「どうします?ルリシヤ」

「…俺は『青薔薇連合会』の味方をするよ」

ほう。

「それは、『セント・ニュクス』と戦う覚悟があるということですね?」

「あぁ…。『青薔薇連合会』に入ると決めたときから、覚悟はしていた…。俺の力だけであいつらを止められなかったら…そのときは、俺があいつらを終わらせる、と」

『セント・ニュクス』を創始したルリシヤが、その手で『セント・ニュクス』を終わらせるとは。

なんとも皮肉な話じゃないか。

「これは…俺がやらなきゃいけなかったことだ。お前達を巻き込んでしまって…本当に申し訳ないと思っている」

「関係ありませんよ。どうやらそのグリーシュとやら、どうあっても俺達と戦わなきゃ気が済まないようですからね」

ルリシヤがいようといまいと、いずれは宣戦布告してきただろう。

むしろ俺達にとっては、ルリシヤが組織を追放されていて助かった。

ルリシヤが『セント・ニュクス』を率いていたら、俺達も手をこまねいただろうからな。

「ではあなたは、『青薔薇連合会』の味方だと思って良いのね。私達を裏切って、古巣の味方につくなんてこと…しないと信じて良いのね?」

アシュトーリアさんが、微笑みながらそう尋ねた。

「ありません。あなた達が俺を裏切らない限りは…。俺は、もう『セント・ニュクス』の人間じゃない」

「もしグリーシュがあなたに頭を下げて、あなたに戻ってきて欲しいと言ったら?それでも戻らないの?」

「…戻りたいところですが、戻れないでしょう。そのときは…彼らに武器を捨てさせて、『セント・ニュクス』を『青薔薇連合会』の下部組織にします」

まぁ、ルリシヤにとってはそれが理想なのだろうが。

残念ながら、そうなる可能性は薄いだろうな。

そのグリーシュ君とやら、俺達を目の敵にしてるようだし。

恨むなら『厭世の孤塔』を恨めよ。俺達何にもしてないじゃん。

大体『厭世の孤塔』の奴らも、大して悪いことしてないぞ。

マフィアの武器庫に忍び込むなんてアホなことするから、そうなるんだ。

こういうのを、逆恨みって言うんだよな。

自分が幼い頃貧民街で苦労した憎しみを、『青薔薇連合会』に向けているのだろう。

「良いわ。それなら、あなたを信じましょう。『青薔薇連合会』で共に、『セント・ニュクス』と戦ってもらうわ」

「…分かりました」

本当は、不本意で仕方ないのだろうに。

ルリシヤは、アシュトーリアさんの言葉に頷いてみせた。

ともかく、ルリシヤは俺達の仲間…と。

そういうことで良いんだな。

俺にとっては有り難い。ルリシヤなんて、敵に回すと厄介極まりないからな。

ただ…ルリシヤ本人にとっては、酷く辛い戦いになるのかもしれない。
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