The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
俺とルルシーは、宣言通り敵陣のど真ん中に突貫していった。

ルリシヤの言う通り、『セント・ニュクス』の構成員は、見た目も中身も実力も、全部お子様だった。

憲兵局のアホ共より、更に脆い。

「ったく、何なんですかね…このイージーゲームは」

「あぁ…。弱過ぎる」

戦闘中なのに、俺とルルシーが仲良く無駄口を叩いてるくらいなのだから…どれだけ余裕があるかは察しがつくことだろう。

この調子なら、本当に俺達二人と、シュノさんの中隊二つだけで全滅させられそうな勢い。

後ろで待機してる予備兵力の出番はなさそうだ。

それと、アリューシャの出番も。

この調子じゃ暇過ぎて、アリューシャが昼寝してしまうぞ。

ルリシヤが迅速な避難指示をしてくれたものだから、周囲に気を遣いながら戦う必要もない。

何?このヌルゲー。

「グリーシュは前線に出てきてるんですかね?それっぽいの、います?」

「どうだろうな…。今のところ、うちの小隊長クラスの敵はいなかったが」

「後ろで指揮してるんですかね…。別に何でも良いけど。それより…」

さっきから…どうにも、俺は気になっているのだ。

「どうした?ルレイア」

「…いえ…」

何なんだろう…この違和感は。

これほど追い詰められた状況なのに、何で敵はこんなに…。

更に。

『アリューシャ暇~!何もやることねぇ』

インカムから、アリューシャの不満げな声が聞こえてきた。

『ほとんどの敵は前線で倒しちゃってるし、なんか敵も及び腰だしさぁ。アリューシャこのままじゃ、MVPになれんじゃん!』

『こら、アリューシャ。軽口叩かないの』

『む~』

…アリューシャの言葉が、頭の片隅に引っ掛かった。

…そう、及び腰。

こいつら、妙に及び腰なのだ。

俺達の強さに怯えてるから?

でも…それなら、こいつらの顔に浮かぶ…焦りのない余裕な表情は何だ?

ルリシヤの言葉が思い出された。

こいつら…この状況でまだ何か、勝算があるのか…?

「…っ!?これ…」

思考を回転させながら敵を斬り、勢いよく吹っ飛ばされた兵士の懐から。

地面に倒された拍子に、ころり、と転がり出てきたものに、俺は息を呑んだ。

武骨な形の、マスク。

これは。

「っ!」

ルルシーも、気づいたようだった。

これは…所謂、ガスマスク、と呼ばれるものだ。

そして、ガスマスクがあるということは。

「シュノさん!今すぐ部隊を下げてください!」

俺はインカムに向かって鋭く叫んだ。

『っ!?分かった!』

シュノさんは、何があったの、とは聞かなかった。

俺の声音で、何か不測の事態が起きてすぐに部隊を下げる必要があるのだと、察してくれたようだった。

俺とルルシーも、急いで踵を返した。

間に合うか。それとも…。

次の瞬間、俺達が気づいたことを察知したのか…缶詰めのような容器が、ころころと地面に転がった。
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