The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
まさか、こんな手段で来ようとは思ってもみなかった。

敵を侮っていたとはいえ、これはさすがにルール違反だぞ。

俺とルルシーは、ハンカチで口を押さえて呼吸を止めた。

毒ガスについては詳しくないが、字面からしてヤバいことは分かる。

すぐに息を止めたつもりではあるが、吸い込んでしまったかもしれない。

皮膚に触れるだけで死ぬタイプだったら、もうアウトだな。

『二人共、今すぐ下がって!アリューシャ!全力でルルシーとルレイアのサポート!』

『了解!』

インカムから、事態を瞬時に把握したらしいアイズが、鋭く指示する声が聞こえてきた。

アリューシャは俺達の周りの敵を一掃してくれた。お陰で、俺達はかろうじて息を止めたまま退避することが出来た。

しかし。

逃げ遅れた何人かの仲間達が、毒ガスをもろに浴びてしまったのだろう、泡を吹いて倒れているのが見えた。

「ルレイアっ!ルルシー!」

先に退避していたシュノさんが、俺の姿を見て泣きそうな顔をして、駆け寄ってこようとした。

しかし。

「駄目だ、近寄るな!」

ルリシヤが、シュノさんを力ずくで止めた。

「どうして!」

「ガスの種類が分からない以上、近寄ったら二次被害が起きる可能性がある。気持ちは分かるが、近寄るな」

「っ…!」

有り難い、賢明な判断だ。

シュノさんまで、ガスの餌食になるところだった。

シュノさんを心配させないように微笑んでみせたが、それが原因だった。

俺は手足が動かせなくなって、そのまま膝をついた。

「ルレイア!」

ルルシーが、俺の身体を支えてくれた。

うん、ちょっと…不味いかも。

「しっかりしろ、ルレイア…!」

「うふふ、大丈夫…。俺、ルルシーと一緒じゃないと…死にませんから」

手足が、凍るほどに冷たい。

ルルシーの手のひらの感触が、燃えるように熱く感じるほどに。

「ルレイア!」

「ルレイアっ!」

「ルレイア、しっかりして!」

ルリシヤや、ルルシーやシュノさんの声が耳に届いたが。

言葉を返す暇もなく、俺はそのまま意識を失った。
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