The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideアドルファス

──────…『青薔薇連合会』と『セント・ニュクス』の戦争に、化学兵器が使用されたという情報が帝国騎士団に入ってきた直後。

俺達は、すぐに緊急会議を行った。

現代ルティス帝国で、まさか戦争において化学兵器なんて代物を、本気で使用するなんて。

正気の沙汰とは思えない。

いくら、『青薔薇連合会』を倒す為に他に方法がないと言っても…。

「『青薔薇連合会』側に犠牲者は?」

「具体的な数はまだ…でも、100名は下らないそうだ」

…まぁ、そのくらいにはなるだろうな。

使われた化学兵器は、致死性の毒ガスだったらしい。

付近の住民は事前に避難していて無事だったが、一度毒ガスが撒かれた土地に、誰が戻ってきたいと思うだろうか。

毒ガスの除去は順次行っているものの…。

国内外にも、化学兵器が使用されたなんて情報を流す訳にもいかない。

情報統制だって馬鹿にならないし、おまけに『セント・ニュクス』の奴らは、まだ更に毒ガスを使う可能性があるのだ。

これ以上は、絶対に使わせてはならない。

『青薔薇連合会』にとっても、俺達にとっても。

「それから…情報によると、幹部のルレイアも毒ガス被害を受けたようです」

部下がそう報告すると、オルタンスがはっとした。

…ルレイアだと?

「まさか、死んだのか?」

死神ですら殺せないと言われた男が、まさか毒ガスで死んだなんて、笑い話だが。

「いえ…。負傷はしたものの、無事だと」

俺とオルタンス、リーヴァ、そしてルシェは、揃って安堵した。

あいつをみすみす死なせたら、一生胸糞悪いからな。

オルタンスはほっとしたように呟いた。

「そうか…それは良かった。俺の初恋が終わるところだった」

「…は?」

お前、今何て言った?

「とにかく、『セント・ニュクス』のこれ以上の暴虐を許す訳にはいかない」

「…だが、『セント・ニュクス』と揉めているのは『青薔薇連合会』だろう?裏社会のマフィア同士の抗争に、何故我々が介入しなければならない?」

五番隊のアストラエアが言った。

いや、俺はアストラエアよりオルタンスのさっきの台詞の方が気になるのだが?

「我々もそれは不本意だ。だが、これ以上化学兵器を使わせる訳にはいかない。我々が止めることが出来なければ、どうせ我々も一緒に責められる」

…その通り。

裏社会の戦争に、表社会の俺達が介入することは、通常であれば有り得ない。

だが、これ以上化学兵器を使わせてはいけない。

もしそれで帝国民に被害が出れば…帝国騎士団の面目も丸潰れだ。

「『青薔薇連合会』と話をしよう。『セント・ニュクス』との…戦争について」

オルタンスの言葉に、反対する者はいなかった。

『青薔薇連合会』と共闘するなんて、思うところもある者はいるだろうが…。

『シュレディンガーの猫』のとき既に、一度は共闘した仲だしな。

それに何より、帝国騎士として…『セント・ニュクス』の横暴を許す訳にはいかない。

ならば、やるしかない。
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