The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

するとそこに、ルリシヤが、

「…俺も同行させてもらえないだろうか」

そう申し出た。

俺としては、遠足に行く仲間が増えるのは嬉しいけど…。

「良いんですか？あなた、まだ帝国騎士団に顔は割れてないのに。行っちゃうとばれちゃいますよ」

「早かれ遅かればれるだろうし…それに、俺は『青薔薇連合会』の仲間だ。帝国騎士団の顔色を伺って、こそこそしたくはない」

そうか。まぁ、ルリシヤは俺と違って、帝国騎士団に顔がばれて困ることもないし…。

いや待て。お兄さんにマフィア入りがばれる可能性があるのでは？

ばれたところで、どうってことはないだろうけど。

だって今更だし。

それに、ルリシヤ兄はただの平騎士なのだから、俺のときとは違って、隊長達の前に姿を現しても「な、何でお前がここに…！」とはなるまい。

「何より、これは俺の責任でもあるんだ。他人任せにはしたくない」

「…あなたに何の責任があるってんですか？」

ルリシヤ、なんかここ最近、ずーっと後ろめたそうな顔してるけどさ。

「『セント・ニュクス』があんな手段を使ったのは、自分のせいだとか思ってるんですか？」

「…あぁ。俺が止められなかったせいだ。あんな手段を選ぶ前に、俺があいつらを止めていれば…」

…こんなことにはならなかっただろうね。確かに。

ルリシヤは、『セント・ニュクス』の暴挙を止める可能性のある人間だった。

それは確かに、その通り。

でも。

「確かにあなたには、彼らを止めるチャンスがあったでしょう。でも…限りなく皆無に近いですよ。追い詰められたら、人間、どんなことでもやってしまう生き物ですからね」

「…それは…」

ルリシヤが、いくら「化学兵器ダメ！絶対！」と言い聞かせてようと。

それが有効な手段だと言われれば、グリーシュは藁にもすがる思いで手を出すだろうし。

そんなもんだ、人間なんて。本当に喉が乾くと、泥水だろうと海水だろうと飲んでしまう。

それが例え、自らの身を滅ぼす行為であったとしてもな。

「一つだけ確認しておきます、ルリシヤ。あなたが『セント・ニュクス』にいた頃、化学兵器を作ろうなんて話が、一度でも口の端に上ったことはありますか？」

「ない。一度もだ。俺がいた頃にそんな話が出ていたら、絶対に許さなかった」

「…でしょうね」

ルリシヤは、馬鹿じゃない。

ルリシヤの目が黒いうちに、化学兵器なんてヤバ過ぎる代物に手を出すことは、絶対に許さなかっただろう。

ということは…この計画が進められたのは、ルリシヤが『セント・ニュクス』を出た後なのだ。