The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
それにしても、気になることがある。

俺はルルシーと二人きりのときに、それについて話した。

「ねぇ、ルルシー」

「うん?」

「俺、ずっと気になってるんですけど…。『セント・ニュクス』の化学兵器について」

「…何だ?」

ルリシヤの話を聞く限り…どうも辻褄が合わないって言うか。

いや、勝ち目がないから化学兵器に頼る…というのは、理屈としては理解出来る。

そうするしか勝機がなかったんだろうなとも思う。

でも。

「化学兵器を使おうって、最初に言い出したのは誰なんだろう、って思って」

「…誰、って…」

多分、誰かいると思うのだ。

ルリシヤの話を聞く限りにおいて、こう言っちゃ悪いが、『セント・ニュクス』は馬鹿だ。

馬鹿とガキの集まりなのだ。

そんな組織がここまで大きくなれたのは、ルリシヤという組織の脳みそになってくれる存在がいたから。

どんなに強い生き物でも、脳みそがすっからかんだと、全く脅威にはならない。

ルリシヤがいなくなった『セント・ニュクス』は、正に脳みそを失った羊の群れだったのだ。

それなのに、化学兵器。

思い付くか?普通。

よし、戦争だ!戦争しよう!と言われたら、奴らがイメージするのは何だ?

銃とか戦車とか爆弾とか、そういう…分かりやすい単純な武器じゃないか?

よし戦争だ。よし化学兵器使おう。なんて思うか?

思わないだろ。

「化学兵器なんて、知ってる人間があの組織にいたと思います?」

「…確かに、偶然閃いたとは考えられんな」

うん、普通は無理だよ。

俺とか、ルルシーだったら思い付くかもしれないけど。

でもそれは、化学兵器ってものの存在を学校の歴史の授業で教わったからだ。

ヤバいものだよ、だから作るのも使うのもいけないよ、って教えられたから。

一方で、『セント・ニュクス』の連中は、ほとんど教育も受けてない…戦争と言えば、殴って斬って撃ってしか思い付かないような連中だ。

ガスばら撒こうぜ、って思う奴が、いるか?

無理だ。化学兵器って、かなり文明的な兵器なんだから。

ルリシヤを捨てるなんて安直なことをしたアホグリーシュが、化学兵器を使うという手段を思い付くとも思えない。
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