The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
…戦いに来たんじゃない、だと?

「…なら、何をしに来たんですか」

いっそ戦いに来た、の方が俺としては楽だったのだが?

「確かめに来たんだ」

「…話が見えませんね」

回りくどい言い方は嫌いだ。

撃ち殺したくなる。

「『シュレディンガーの猫』の件だ」

…あぁ、成程。それで理解した。

「表向きは、奴らを滅ぼしたのは帝国騎士団だと言われている…。一方で、ルティス帝国最大のマフィア、『青薔薇連合会』が関わっているとの情報もある」

その情報を掴んだというだけで、大したもんだ。

ますます扱いづらい。

「だから真偽を確かめに来た。お前達が、あの『シュレディンガーの猫』を滅ぼしたのであれば…」

「…」

…もしそれが本当だったら、俺達に何をするつもりなのか。

俺達は『シュレディンガーの猫』との一件の後、後始末を帝国騎士団に押し付けた。

『シュレディンガーの猫』を始末したのは、帝国騎士団。

表の世界の人間には、そう思わせておかなければならないからだ。

まさか、マフィアとマフィアが抗争したなんて言えないからな。

ましてや…『青薔薇連合会』と帝国騎士団が組んだ、なんて…知られる訳にはいかない。

だから表向きは、『シュレディンガーの猫』を滅ぼしたのは帝国騎士団、ということになっている。

でも、実際は。

「あの情報が虚偽であれば何の問題もない。しかしもし本当なら…。お前達に、そんな力があるのなら…」

「…なら、何ですか?」

「我々も考えがある」

…成程ね。

なかなか一丁前じゃないか。祖国を逃げ出してきた分際で。

「そして、今…あの情報が本当だったことが分かった。私の正体を瞬時に見破る、その観察眼…。只者ではない。つまりあの情報は真実なのだ。お前達が…『シュレディンガーの猫』を殺ったんだろう」

「…」

「ただのゴロツキ集団だと思っていたが…。どうやらそうではないようだな」

…気に入らないなぁ。

実に気に入らない。

勝手に潜入してきて、ルルシーとの結婚の邪魔をしてくれて、おまけにこの偉そうな上から目線。

非常に気に入らない。

これでこのヴァルタが見るに耐えないブスであったら、今頃我慢出来ずに撃ち殺していたことだろう。

「…いい加減、その薄暗い腹の内を話せよ」

俺が聞きたいのは、そちらの方なのだ。

殺気を込めて脅すと、さすがのヴァルタも少し目を細めた。
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