The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
現状俺達は、奴らの手のひらの上にある。『セント・ニュクス』の想定内の動きしかしていない。

だから俺達は、常に後手に回ってしまって、奴らの尻尾を掴むことが出来ない。

従ってまずは、奴らの「想定内」から外れて、「想定外」にしてやらなければならない。

奴らの手のひらの上から降りるのだ。そこでようやく、俺達の立場は対等になる。

それ故、放置するのだ。

「これ以上奴らの思惑通りに踊ってやる必要はありません。とにかくしばらく放置して、奴らが次にどう動くのかを静視する。それで見えてくるものが変わるんじゃないかと」

「…まぁ、一理ある…が」

「…危険な賭けだわね」

ルルシーとシュノさんも、理解したようだ。

しかし。

「…?ルレ公何言ってんの?」

俺の説明が理解出来てないアリューシャである。

分かりやすく噛み砕いて説明しようかと思ったら、アイズが。

「大丈夫、アリューシャには後で私が絵本を描いて教えるから」

「せんきゅー!さすがアイ公」

「…お前、アリューシャを甘やかし過ぎだろ…」

ルルシーは、天を仰いで嘆いていた。

まぁ、あれだよ。要するに、一言でまとめると。

「押して駄目なら引いてみろ」ってことだよ。

散々押しまくっても見つからないから、今度はちょっと引いてみることにしたんだよ。それだけだ。

すると、シュノさんが不安そうな顔で意見した。

「でも、ルレイア…。放置してる間に、敵が私達の予想以上にたくさんの化学兵器を量産していたらどうするの?大量に量産は出来ないっていうのは、あくまで推測でしょう?敵がもし、大量に化学兵器を量産出来る体制を整えていたら…」

「その可能性はありますね」

確かに、否定は出来ない。

例えば、『青薔薇連合会』や帝国騎士団の目が行き届かない国外で化学兵器を造っていたら?

放置している間にたっぷり造って、『青薔薇連合会』どころか帝国騎士団さえ一網打尽に出来るくらい蓄えてるかもしれない。

有り得ないとは言い切れないのが辛いところ。

「でも、それよりまずは『敵の想定から外れる』ことを優先するべきだと思うんです。敵を放置しても、このまま血眼になって見つからない拠点を探し続けても、同じように時間は流れる」

それに。

「俺が恐れているのは、敵の拠点が見つからないことでも、大量の化学兵器を量産されることでもありません。もし今、運良く敵の拠点を見つけたとしても…。それがもし、『俺達を嵌める為にわざと流した情報』を掴まされただけだったら?」

「…!」

「有り得なくはないと思うんですよ。この敵の狡猾さを見たら…」

これほど頭の良い敵なのだ。

このまま泥沼に嵌まり続けたら、俺達は次第に焦りを増していくことだろう。

今すぐにでも見つけなくては、と焦りに焦っているところに…偽の拠点の情報を流したら、どうなる?

俺達は、飢えた獣のようにそのダミー情報に飛び付くだろう。

そして、疑いもせずに準備万端整えて出陣するだろう。

敵が罠を張った…偽の拠点に。

その結果どうなるかは、言うまでもない。

俺達はまんまと罠にかかり、化学兵器の餌食にされることだろう。

それだけは、絶対に避けなければならない。
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