The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
つい一週間ほど前、政務の途中だった俺のもとに、強ばった顔をしたユーレイリーがやって来た。

「坊っちゃん…その」

「ユーレイリー?どうした?」

彼の堅い顔を見て、何か良くない知らせがあったのでは、と思った。

何だろう。まさか内乱?それとも、憲兵局の残党が…。

「…書簡が、届いているのですが…」

「…誰から?」

「…その、ルレイア殿から」

「…」

「…」

これには、俺もユーレイリーも、無言でお互いを見つめ合った。

…何だって?

「…ユーレイリー。ルレイア殿からの便り…用件は一体何だと思う?」

「さぁ…。ただ、あまり楽しいものではないのでは…」

「…俺もそう思う」

…だって、ルレイア殿だぞ?

あのルレイア殿からの手紙だぞ?

怯えるなと言う方が無理だ。

未だに、疲れて眠ったときは死神モードのルレイア殿が夢に出てくる。

あの人の夢を見た日は、起きたときに悪寒が走る。

そんなルレイア殿からの手紙なんて、出来れば封を開けずに送り返したいほどである。

…いや、待て。

それはあまりにも失礼じゃないか、ルアリス。仮にもルレイア殿は、祖国を救う手助けをしてくれた、言わば俺にとっては英雄同然なのだ。

その…ちょっと英雄と呼ぶには、穢れ過ぎた人ではあるが。

でも、ルレイア殿が協力してくれたからこそ、俺達は今こうして、平和な国を取り戻せたのだ。

恩人からの手紙を送り返したいなんて、失礼にもほどがある。

ちゃんと、有り難く読まなくては。

「…分かった。読んでみる」

「はい。…頑張ってください」

手紙を読むのに「頑張ってください」って。

でも本当、それくらいの勇気は要るのだ。あの人からの手紙は。

ごくりと生唾を飲み込み、封を開ける。

何が書いてあるのかと思ったら、そこには。

「…」

「…坊っちゃん、何て書いてあったんです?」

今からお前らぶっ潰しに行くので宜しく、とは書いていなかった。

そう書いていなかったのは安心したが…しかし。

その手紙には、およそ安心出来ないお誘いが書かれていた。
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