The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
俺はリビングの隣の部屋に入って、体育座りをした。

…フューニャ、楽しそうだったな。

やっぱりお友達と喋るの、楽しいんだろうな。女の子だしな。

いくら話しても、話の種は尽きないことだろう。

…で、俺は?

思わず逃げてきてしまったが、あの場に至って俺は邪魔なだけ。

女の子同士のお喋りにおいて、一番要らないのは男である。

心置きなく話せなくなるもんな。

今頃…あれだよ。亭主の悪口とかで盛り上がってるんだろう。

フューニャは俺にどんな不満を抱えているのだろう。

聞きたい。聞きたいけど心当たりが色々あり過ぎて怖い。

何喋ってんのかな、お二人共…。俺も入れてくれないかな。

とても入り込む余地はないけど。

「…」

…心に隙間風。

「…よし」

俺は良からぬことを考えた。ちょっとだけ。ちょっとだけ盗み聞きしよう。

俺はリビングの壁に耳を当てて、二人がどんな話をしているのか耳をそばだてて聞いてみた。

すると。

「しかしフューシャ、そなた、また乳が大きくなったんじゃないか?やはり恋しい男に毎日揉まれていると育つものじゃな」

「ちょ、ちょっと…。何処触ってるの」

「ぶっふっ」

予想以上に濃い話をしていらっしゃった。

俺は思わず噴き出し、口許を手で押さえた。

馬鹿、声を出すなよ盗み聞きがばれるだろ。

って言うか、あのミルミルめ。

人妻に対するセクハラだ、セクハラ。

そりゃ確かにちょっと大きくなったかなとは思うけど。

それを堪能して良いのは俺だけであって、貴様ではない。

俺だって、俺だって揉みたいけど、でもあんまり揉んだら怒られるかなと思って普段は我慢しているというのに、あの女。

誰の許可を得てフューニャの胸を。妬ましい。

妻の親友に激しく嫉妬しながら、俺はなおも話の続きを聞こうと壁に耳をつけた。

「あんなに若い夫だと、毎晩大変じゃろう?飢えた獣も同然じゃろうに」

「私もそう思ってたんだけど。ルヴィアさんはそうでもないわよ」

ますます何の話だ。

誰が飢えた獣だって?

「ほう?そうでもないのか。意外に『役立たず』なのか?あの男」

余計なお世話だ。

加速するセクハラ。

「『役立たず』ってほどでもないけど」

「ふぅん…。上手いのか?それとも下手か。見た目は下手そうだったが」

失礼にも程がある。

いや、そりゃ俺だって上手いという自信はないけど…。

あっ、でもフューニャに「下手くそよ。全然駄目、満足出来ない」とか言われたら、俺もう立ち直れない。

この返事は聞いてはならないと、俺は反射的に耳を離した。

心臓ばっくばく。

…フューニャ、何て答えたんだろうな?

フューニャの返事は聞こえなかったが(と言うか聞かなかったが)、ミルミルの甲高い笑い声はよく聞こえてきた。

…え?何その笑い。

もしかしてあれ?本当に下手くそって言ったの?フューニャさん。

俺はよろよろと床を這い、べたっ、と倒れた。

…俺はもう立ち直れません。

震える手で、ポケットのスマートフォンを手繰り寄せた。
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