The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
…しばし考えて、俺は一つの仮説を思い付いた。

まさか、俺達なんて取るに足らない、と?

わざわざ血眼になって探す価値はないと?そう判断したのか?

化学兵器に頼りたいなら、好きに造れば良い。

戦争したいなら、好きに戦争すれば良い。

そう思って、俺達を野放しにしたのか?

…馬鹿にしてるってのか。この俺を。

きっとそうだ。あいつら『青薔薇連合会』は、いつだって俺達のような貧民街出身のマフィアを馬鹿にしてきた。

だからきっと今度も、俺達を見くびって、見下して、無視することに決めたのだ。

「…ふざけやがって」

この期に及んで、まだお高くとまるつもりか。

俺達を舐めていたら、痛い目を見るということ…まだ学習していないようだな。

そっちがそのつもりなら、こっちもやってやる。

俺達に逆らったことを、後悔させてやるのだ。

奴らが無視している間に、精々たっぷりと化学兵器を造らせてもらうぞ。

「よし。また別の工場を買収するぞ。そこでも新しい化学兵器を量産しよう」

「えっ…」

部下は、明らかに顔色を変えた。

「…何だよ」

「い、いえ…あの、グリーシュさん」

俺より年下の部下は、おずおずと申し出た。

「その…化学兵器を使うのは、やめた方が良いんじゃないでしょうか」

「…はぁ?」

この馬鹿は、一体何を言ってる?

「だって…帝国騎士団まで介入してきて、二度と造るなって警告してきたんでしょう?さすがに不味いですよ…」

「…」

この馬鹿、臆病風に吹かれたか。

情けない奴め。それでも『セント・ニュクス』の兵士か。

「今更甘えたことを言うな。帝国騎士団が何だって言うんだ?あいつらに何が出来る」

「だって、国際法違反だって…。このまま俺達、ルティス帝国だけじゃなくて、諸外国全てを敵に回してしまうことになるんですよ?」

「…」

…それが、何だって言うんだ。

俺は甘えたことを抜かす部下の頭を、拳骨で殴り付けた。

「俺達の敵は『青薔薇連合会』だ。馬鹿なことを言うな!臆病風に吹かれて、甘えたこと抜かしてる暇があったら、さっさと工場の買収に取りかかれ!」

「そ、そんな…!でも、もう近隣の工場は場所を貸してはくれません。もう化学兵器の製造には関わりたくないって、何度も請願が…」

「それを納得させるのがお前達の仕事だろうが!逆らうなら銃で脅せ!金を握らせろ!」

「…グリーシュさん…」

「早く行け!ぼやぼやするな!この無能が」

俺は苛立ち紛れにそう吐き捨てた。

全く、使えない部下ばっかりだ。

あいつが部下を甘やかすから、こんな無能の集まりになってしまったのだ。

俺は違う。俺はちゃんと部下を教育して、未来の『青薔薇連合会』に代わる組織として、『セント・ニュクス』を大きく育ててみせるのだ。

あいつより俺の方が優秀だってことを、思い知らせてやる。
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