The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

side『セント・ニュクス』

────…グリーシュさんが去った後、僕は不満げな表情を隠しもせずに、廊下を歩いていた。

そこに、僕と同い年の仲間と鉢合わせした。

「どうした?そんな怖い顔して」

「またグリーシュさんから命令だよ」

「またか…。今度は何?」

「化学兵器を造る工場を増やせって。協力しないなら銃で脅せと言ってたよ」

「…!」

最近のグリーシュさんの命令は、そんなのばかりだ。

逆らうな。逆らう奴は殺す。

部下の意見なんて聞かないし、自分がこうと決めたら、それを達成する為には手段も選ばない。

「化学兵器って…。なぁ、本当に不味いんじゃないのか?『青薔薇連合会』だけじゃなくて、帝国騎士団まで首突っ込んできてるらしいじゃないか」

「そんなの、僕に言われても…。グリーシュさんに言ってよ。どうせ聞く耳持たないだろうけど」

「…だよな。最近は『彼ら』の意見しか聞かなくなってるし…」

「…」

僕達だって、法律なんて知らないし、習ったこともない。

でも、国際法違反なんて言葉だけで、何やらヤバいことだってくらいは分かる。

しかも、マフィアの争いに帝国騎士団まで介入してきてるんだ。これはただ事じゃない。

グリーシュさんは、化学兵器を使った戦法がいかに有効かと、自慢げに皆の前で語ったけど。

僕らの目には、ただの卑怯な騙し討ちにしか見えなかった。

勿論、そんなこと言ったら殴られるから、言わないけど。

『セント・ニュクス』の構成員は、誰もグリーシュさんには逆らえない。

グリーシュさんは僕らの意見なんて耳を貸そうとしないし、僕達の為だとか言って、他組織との戦争ばかりを繰り返している。

挙げ句変な奴らと組んで、そいつらの言うことを鵜呑みにして、化学兵器なんて得体の知れないものを造って…天下の『青薔薇連合会』まで敵に回している。

これがどれだけ凄いことかと、グリーシュさんは高らかに話していたけど。

僕らにはそんなこと、よく分からない。何であんなに怖い人達に、わざわざ喧嘩を売るのだろうと疑問に思う。

おまけに最近のグリーシュさんの、酷く横暴なことと言ったら。

頭ごなしに怒鳴り付けて命令し、少しでも反対意見を口にすれば殴って黙らせる。

威厳の欠片もないリーダーだ。

ルニキスさんだったら、絶対あんな風に命令したりしなかった。
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