The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…ルニキスさん、何処行ったんだろうな?」

僕は、ぽつりと仲間にそう聞いた。

ルニキスさんだったら、グリーシュさんにも意見することが出来た。

グリーシュさんみたいに頭ごなしの命令じゃなくて、ちゃんと納得出来るように説明してくれた。

何より、僕達末端の構成員を大事にしてくれていた。

今のグリーシュさんを見てみろ。僕らのことなんて、駒としか思ってない。

グリーシュさんは化学兵器を盲信しているけど。

あの化学兵器を造る為に、何人が製造途中に怪我をしたり、持ち運んでいるときに起きた事故で被害を被ったか…ちゃんと分かってるんだろうか?

僕の友達の一人も、出来上がった毒ガスを運んでいて、その最中に毒ガスの缶を落として命を落とした。

ルニキスさんだったら、絶対あんな恐ろしい兵器を使おうとはしなかったはずだ。

ルニキスさんがいたときは、グリーシュさんもあんなに横暴じゃなかったのに。

あるときを境に、ルニキスさんはいなくなってしまった。

「そうだ、ルニキスさんの噂、聞いたか?」

「噂?」

彼は声を潜めて、小声で話を続けた。

「ルニキスさんは今、『青薔薇連合会』にいるらしいんだ」

「えぇ!?」

「ちょ、大きな声出すなよ。グリーシュさんに聞かれたら大変だ」

「ご、ごめん」

俺は慌てて口をつぐんだ。

でも…でも、ルニキスさん、何で『青薔薇連合会』に?

「その噂、本当なのか」

「分からない。でもこの間の戦闘のときに、見た奴がいるんだって。『青薔薇連合会』側にいて、逃げ遅れた住民を避難させてるルニキスさんを」

「…じゃあ、グリーシュさんが言ったことは、本当だったんだ」

ルニキスさんがいなくなったとき。

グリーシュさんは、皆にこう説明した。

ルニキスさんは、『セント・ニュクス』を裏切って出ていったのだ、と。
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