The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
僕は信用しなかった。
ルニキスさんが裏切るなんて、僕らを見捨てて行くなんて、あの人はそんなことはしない。
いつも誰よりも前に出て、僕達を下がらせ、どんな怖い敵も一人で相手にしていたルニキスさん。
自分の怪我には無頓着なのに、僕らが怪我をしたら真っ先に手当てをしてくれた。
野菜嫌いな僕らの為に、美味しい野菜料理を作って食べさせてくれた。
あんなに忙しかったのに、時間を見つけては僕らに読み書きや計算を教えてくれた。
あの優しいルニキスさんが、僕達を裏切るなんて信じられない。
きっとルニキスさんが『セント・ニュクス』を出ていったのは、他に理由があるんだ。
僕はそう思っていた。
でも…その噂が本当なら。
本当に、ルニキスさんが『青薔薇連合会』にいるなら。
ルニキスさんは僕達を裏切って、『青薔薇連合会』についたんだ。
そんなことする人じゃないと思っていたのに…。
ショックを受けていた僕に、仲間の彼は慌てて首を振った。
「違うよ、まだ続きがあるんだ。これは証拠がある訳じゃないんだけど…もう一つ噂があって」
「?何…?」
もう一つの噂?
彼はしきりに辺りを見渡して、聞き耳を立てている人間がいないことを確認した。
そして、更に声を低くしてこう言った。
「…ルニキスさんは裏切ったんじゃなくて、裏切られたんじゃないかって」
「え…?」
…裏切られた?
ルニキスさんが裏切ったんじゃなくて、ルニキスさんが裏切られた?
「それ、どういうこと?」
「あくまで噂ではあるけど…。ルニキスさんは、誰かに嵌められて『セント・ニュクス』を追放されたんじゃないかって」
「誰かって…誰だよ」
「…決まってるだろ?」
…その通り。決まってる。
あの人を裏切ることが出来るのは…同じ『セント・ニュクス』のリーダーだった、グリーシュさんだけだ。
そして、今のグリーシュさんならやりかねない。
やりかねない人だ。
もしそうなのだとしたら…ルニキスさんがいなくなったのも納得出来る。
しかし。
「でも…あの二人って、仲良かったんじゃないのか?」
二人は親友同士だと聞いていた。親友同士で裏切りなんて…そんなことがあるだろうか?
少なくとも、ルニキスさんがグリーシュさんに恨みを買うようなことをしたとは思えない。
逆ならまだしも…。
「昔は仲良かったみたいだけど、ルニキスさんが出ていく少し前からは、ずっと喧嘩ばっかりしてたじゃん。それに…あの頃からグリーシュさん、『彼ら』とも付き合い始めてたみたいだし…」
「…」
そう。グリーシュさんは、「彼ら」に会ってから、段々おかしくなっていた。
ルニキスさんは、そのことを知っていたのだろうか。
「『彼ら』と会ってるってことがばれたら、ルニキスさんに反対されると思って…ルニキスさんを騙して追い出したんじゃないかって、噂になってるんだよ。本当かどうかは分からないけどね」
「…そうなんだ」
僕はその噂を、本当のことだと思った。
根拠がある訳じゃない。ただの噂だって分かってる。
でも、多分それが真実なのだ。
ルニキスさんは、僕達を裏切ったりしない。
だから、裏切ったのは…グリーシュさんの方。
だとしたら…僕は、このまま『セント・ニュクス』で、ルニキスさんを裏切ったグリーシュさんに殴られながら、彼の言うことを聞いていて良いのだろうか?
ルニキスさんが裏切るなんて、僕らを見捨てて行くなんて、あの人はそんなことはしない。
いつも誰よりも前に出て、僕達を下がらせ、どんな怖い敵も一人で相手にしていたルニキスさん。
自分の怪我には無頓着なのに、僕らが怪我をしたら真っ先に手当てをしてくれた。
野菜嫌いな僕らの為に、美味しい野菜料理を作って食べさせてくれた。
あんなに忙しかったのに、時間を見つけては僕らに読み書きや計算を教えてくれた。
あの優しいルニキスさんが、僕達を裏切るなんて信じられない。
きっとルニキスさんが『セント・ニュクス』を出ていったのは、他に理由があるんだ。
僕はそう思っていた。
でも…その噂が本当なら。
本当に、ルニキスさんが『青薔薇連合会』にいるなら。
ルニキスさんは僕達を裏切って、『青薔薇連合会』についたんだ。
そんなことする人じゃないと思っていたのに…。
ショックを受けていた僕に、仲間の彼は慌てて首を振った。
「違うよ、まだ続きがあるんだ。これは証拠がある訳じゃないんだけど…もう一つ噂があって」
「?何…?」
もう一つの噂?
彼はしきりに辺りを見渡して、聞き耳を立てている人間がいないことを確認した。
そして、更に声を低くしてこう言った。
「…ルニキスさんは裏切ったんじゃなくて、裏切られたんじゃないかって」
「え…?」
…裏切られた?
ルニキスさんが裏切ったんじゃなくて、ルニキスさんが裏切られた?
「それ、どういうこと?」
「あくまで噂ではあるけど…。ルニキスさんは、誰かに嵌められて『セント・ニュクス』を追放されたんじゃないかって」
「誰かって…誰だよ」
「…決まってるだろ?」
…その通り。決まってる。
あの人を裏切ることが出来るのは…同じ『セント・ニュクス』のリーダーだった、グリーシュさんだけだ。
そして、今のグリーシュさんならやりかねない。
やりかねない人だ。
もしそうなのだとしたら…ルニキスさんがいなくなったのも納得出来る。
しかし。
「でも…あの二人って、仲良かったんじゃないのか?」
二人は親友同士だと聞いていた。親友同士で裏切りなんて…そんなことがあるだろうか?
少なくとも、ルニキスさんがグリーシュさんに恨みを買うようなことをしたとは思えない。
逆ならまだしも…。
「昔は仲良かったみたいだけど、ルニキスさんが出ていく少し前からは、ずっと喧嘩ばっかりしてたじゃん。それに…あの頃からグリーシュさん、『彼ら』とも付き合い始めてたみたいだし…」
「…」
そう。グリーシュさんは、「彼ら」に会ってから、段々おかしくなっていた。
ルニキスさんは、そのことを知っていたのだろうか。
「『彼ら』と会ってるってことがばれたら、ルニキスさんに反対されると思って…ルニキスさんを騙して追い出したんじゃないかって、噂になってるんだよ。本当かどうかは分からないけどね」
「…そうなんだ」
僕はその噂を、本当のことだと思った。
根拠がある訳じゃない。ただの噂だって分かってる。
でも、多分それが真実なのだ。
ルニキスさんは、僕達を裏切ったりしない。
だから、裏切ったのは…グリーシュさんの方。
だとしたら…僕は、このまま『セント・ニュクス』で、ルニキスさんを裏切ったグリーシュさんに殴られながら、彼の言うことを聞いていて良いのだろうか?