The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
季節は、夏。

そりゃ花火大会もあるだろう。

でもさ、だからって。

…平和ボケし過ぎてね?

実は今、スルーしてるだけで、『セント・ニュクス』と抗争状態にあるって、知ってる?

皆、もうなかったことにしてるのかもしれない。

「それじゃ、ルルシーはこのエロい浴衣でけって…」

「ちょっと待て。ちょっと待てルレイア!こら!」

「何ですか?」

何ですかじゃねぇ。

「いくらなんでも平和ボケし過ぎだろ。もう少し自粛したらどうだ。それどころじゃない状況だって、お前だって分かって…」

「えー。思いっきり羽目外すから、無視のし甲斐もあるんじゃないですか。警戒してることがばれたら、向こうの思う壺ですよ?」

それは…そうかもしれたいけどさ。

「そうそう。王者の余裕を見せつけるには、花火大会を楽しむくらいが丁度良いよ」

「アイズ…お前まで」

「そうだそうだ!りんご飴食いたいしな!わたあめと!あとチョコバナナ!」

「お前は食い物が欲しいだけだろ」

この食い意地アリューシャめ。

しかも全部甘いもの。

「ルレイアと、花火大会で浴衣デートするの。楽しみね」

普段は真面目なのに、ルレイアのことが絡むと途端に単純になるシュノは、この調子。

そして、ルリシヤまでもが。

「そう心配しなくて大丈夫だ、ルルシー先輩。一応アシュトーリアさんにも相談したが、『良いわねぇ、私も予定がなかったら一緒に行ったのに』と言ってたくらいだから」

「アシュトーリアさん…」

止めてくれよ。

止めてくれたことないけどな。あの人。

『青薔薇連合会』には、楽観主義者しかいないのか。

いや待て、ルヴィアだ。ルヴィアがいる。

ルヴィアなら、平和ボケした上司達をやんわりと諌めてくれるはず、

「良いなぁ。俺もフューニャ誘って…一緒に花火大会行こう」

…駄目だった。

うちの部下、まるで頼りにならなかった。

カタログ抱えて、ほくほくしていらっしゃる。

こうなってしまうと仕方がない。四面楚歌という奴だ。

まともな人間がいない。

「ね、ルルシー。ルルシーも行くでしょう?俺と一緒に行ってくれますよね、浴衣着て、花火大会!」

「…」

「まさか嫌、なんて言いませんよね…?嫌なんて言われたら…俺、ルルシーと花火見たさに、花火が見えるマンションを買って、そこにルルシーを監禁して一緒に花火を眺め、」

「分かった行く。行くから、監禁とエロい浴衣はやめてくれ」

他に、何て答えれば良かったのだろう。

拒否権ないじゃん。いつものことではあるけども。

「あ、じゃあこっちのキュートな浴衣にします?」

「キュートも却下だ。頼むから、男物の浴衣にしてくれ」

「ちぇー。つまんない」

つまんなくて結構。

「エロい浴衣、似合うと思ったんだけどな…」

ぽつりと呟いてるルリシヤ。お前、敵か味方かはっきりしろ。

敵だな。

そんなにエロい浴衣が良いなら自分で着ろ、と言いたかったが。

ルリシヤはルレイアとはまた別のタイプのアホだから、彼にそんなこと言えば、「分かった、そうする」と言い出しかねない。

ので、黙っておくことにした。

「…よし、帰ってフューニャに、浴衣勧めてみよう」

そして俺の部下は、上司である俺を無視して、カタログ片手にほくほくと帰っていった。

あいつも大概アホだよな。我が部下ながら。
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