The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルヴィア

─────…更に一方、その頃。

俺とフューニャもまた、花火大会の会場にいた。




「手、離すなよ、フューニャ。はぐれないように」

「はい。迷子にならないでくださいねルヴィアさん」

「…気を付けます」

あくまで迷子になるのは俺か。そうですね。

とにかく、フューニャの手を離さないようにしよう。

…それにしても。

浴衣を着たフューニャの、可愛いこと。

本当によく似合ってる。

浴衣も勿論、珍しく髪を一つにまとめているのも凄く可愛い。

フューニャほどお団子が似合う女の子って、いるの?

「靴、ちょっと歩きにくいです」

下駄に慣れないらしく、フューニャはちょっと躓きそうになりながら歩いていた。

「大丈夫か?絆創膏持ってきてるけど、貼る?」

「大丈夫です」

下駄は慣れてないと、すぐ靴擦れするって言うもんな。

気をつけてやらないと。

出来るだけゆっくり歩くことにしよう。

「何か食べようか、フューニャ。どれ欲しい?」

「…私、あれしたいです」

フューニャは食べ物の屋台ではなく、金魚すくいの屋台を指差した。

「良いよ、やろう」

実はあまり得意ではないのだが…とにかく、やってみよう。

フューニャはやったことあるのかな?箱庭帝国には金魚すくいなんて文化はなさそうだが。

しかしフューニャ、ここで凄まじい才能を見せた。

元々器用だからか、ひょいひょいと金魚をすくってみせた。

俺のと合わせて、20匹越え。

「たくさん取れましたね、ルヴィアさん」

「あぁ」

もらったばかりの金魚を眺めながら、ご満悦のフューニャ。

「…明日かき揚げにして食べましょう」

「!!!?」

びっくりし過ぎて、金魚落っことすかと思った。

金魚もびっくりしていたに違いない。

マジで!?って。

「どうしたんです?ルヴィアさん」

「え?え?いや…あの…冗談、だよな?」

「何がですか?」

え?マジで冗談じゃないの?

金魚すくいしたいって言ってたのはその為なの?

「…フューニャ、あのな」

「はい?」

「この金魚って…実は…食用じゃなくて、観賞用なんだぞ。食べるものじゃないの」

「…」

食べちゃいけない色してるだろ?赤いし。

着色料だよ、これ多分。

いや、この金魚をかき揚げにしたら、そりゃ綺麗な色になって美味しそうかもしれないけど。

…やめた方が良いと思うんだ、俺は。

「…知ってますよ。ちょっと言ってみただけです」

「…」

フューニャさん、あの…。目を逸らしながら言われても、全然信憑性が。

「ちゃんと飼いますよ」

「そ…そうか。そう。そうしような」

もう少しでからっと揚げられて食べられるところだった金魚達は、九死に一生を得た。
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