The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…」

…駄目だった。

何故か、余計に酷いことになった。

しかも焦げた。

俺は…料理、下手くそだっていうことなんだな…。

そろそろ泣いても良いだろうか。

名誉挽回どころの騒ぎじゃない。俺の名誉は元々地を這っていたが、このオムライスで地中に落ちた。

…見栄張って難しいメニューに挑戦するんじゃなかった。

こんなのどうするんだよ。この無惨なオムライス。

しかも片方、卵が焦げてるしさ。

これじゃオムライスじゃなくて、破れた卵添えチキンライスだよ。

「ルヴィアさん…?大丈夫ですか?」

「ひぐっ」

俺が長いことキッチンにこもっているからか(それとも焦げ臭かったからか)、心配したフューニャが声をかけてきた。

「出来ましたか?」

「…うん…」

汚物が錬成出来ました。

さすがに…さすがに食べたくないよな、これは…。

俺はオムライスにラップをかけ、チラシで隠した。

こんなの見られたら、笑われるに決まってる。

捨てるのも勿体ないから、後で俺が一人で食べよう。

「…ごめん、フューニャ。変なのしか出来なかったからさ…。悪いんだけど、今日…外に食べに行かない?」

「…」

情けないことこの上ないが…さすがにあれは食べさせられない。

そう思ったのだが。

「何作ったんですか?」

「…いや…あの…」

「見せてみなさい」

「あ、え、ちょ」

フューニャは、オムライス(の、ようなもの)を隠していたチラシをしゅばっ、と取り払った。

あぁ…見せたくなかったのに。

「…」

フューニャはじーっ、とオムライスもどきを見つめていた。

「へったくそwってかこれ何w」って思ってんだろうなぁ…。

情けない。

「フューニャ…あの…ごめんな」

食べ物を無駄にして、と怒られるかと思ったが。

意外なことに、フューニャは怒らなかった。

「そんなに悪くないじゃないですか。食べますよ、私」

「…え」

フューニャはけろっとしてスプーンを持ってきた。

え。マジで食べるの?この変なの食べるの?

「フューニャ…でも、それ…美味しくないって」

止めようとしたのに、フューニャは俺の制止を聞かずにオムライスをぱくり。

普通にもぐもぐ食べていらっしゃった。

マジでか。

「むぐ。…別に美味しくないことないですよ。見た目はちょっとあれですけど、でも味は普通です」

「ほ…本当に?」

「えぇ。初めてなら、誰しもこんなものでしょう。充分及第点です」

「…!」

フューニャ…お前、なんて良い子なんだ。

「今度はきっと、もっと上手く出来ますよ」

「うん…。フューニャ、ありがとう…」

俺は泣きそうになりながら、オムライスもどきを口に運んだ。

確かに見た目は悲惨だが、味はそんなに悪くない。

つまるところ、卵で包むところを失敗してしまっただけで、他は上手く出来ていたのだ。

文句の一つも言わず、ぺろりと食べてくれたフューニャに、感謝である。
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