The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
俺には、ルレイアさんのように貸し切り券を貢いでくれるようなハーレム会員はいないので(というか、いる方がおかしい)。

平日に休みを取り、通常営業中にやって来た。

人でごった返しているかと思ったが、平日の午前中だった為か、むしろ空いているくらいだった。

良かった。これなら迷子になるということもなさそうだ。

俺は早々に着替えて更衣室の外に出て、フューニャが水着に着替えるのを待っていた。

…めっちゃそわそわする。

フューニャ可愛いだろうな…。いつも可愛いけど。でも水着着たらきっと、もっと可愛いよ。

浴衣のときも相当可愛かったが、水着はどうだろう。

あっ、でもあんまり可愛過ぎても困るな…。変な男がフューニャをじろじろ見てたら、殴りそうになる。

やはり俺も貸し切るべきだったか、と思っていると。

「お待たせしました、ルヴィアさん」

「あ、フューニャ…」

俺の前に現れたフューニャの姿に、俺は思わず言葉が出なくなった。

…やべ。予想以上のダメージ。

「…どうしました?」

「…いや…」

やっぱり貸し切れば良かった。こんなに可愛かったら、皆じろじろ見るに決まってる。

徹底的に男の視線からガードしなくては。

「似合います?」

「…似合い過ぎて困る…」

ビキニにしなくて良かった。これでフューニャがビキニなんて着てたら、 周りの視線が気になってプールどころじゃなかった。

可愛過ぎるのも考えものだな。

「さてと…それじゃ、泳ごうか。フューニャ、どのプール行く?」

「…」

「…?」

何故無言?

初っぱなからウォータースライダーってのもあれだし…まずはちょっと泳ぐか。

「じゃ、そこの大きいプール入ろうか。結構空いてるし」

「…はい」

オーソドックスな25メートルプールに入る。冷たい水が心地よい。

プールなんて来るの、いつ以来だろうな。

当分泳いでないから不安だったが、いざ少し泳いでみると、意外に身体が覚えていた。

案外行けるじゃないか。

俺は、すい~と気持ちよく泳いできたが。

「…ん?」

嫁のフューニャが、いつまでもプールサイドでじーっと突っ立っていた。

…あの子は何をやってるんだろう。

「フューニャ?どうしたんだ?」

「…」

「おいで、こっち来て一緒に泳ごう。気持ち良いぞ」

「…」

「…?」

…何で無言なんだろう。さっきから。

何処か調子でも悪いのかな。

「フューニャ…?」

「…」

…あっ、もしかしてあれか。

折角、流れるプールとかウォータースライダーとか色々種類があるのに、何処にでもある普通のプールで普通に泳ぐだけなんて、つまんないと。

そう思っているのか。

これは申し訳ない。

「ごめん、普通のプールなんてつまらないか?じゃあ別のプールに…」

「…」

「…」

…そういう訳でもないのか?

ごめん、ちょっと本当に分からない。

「さっきからどうしたんだ、フューニャ…。何か言いたいことがあるなら…はっきり言ってくれないか」

「…」

「あの…フューニャ…」

「…ルヴィアさん、私」

…ん?

フューニャは、ふいっ、と顔を背けてこう言った。

「私は別に、泳げない訳じゃありません」

「…」

「泳げない訳じゃありませんから。別にたくさんの水の中に入るのが怖い訳じゃありません」

「…」

…水着に、あんまり乗り気じゃなかったのは、このせいなのか。

この日、うちの嫁が金槌であることが判明した。
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