The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
二時間後。

「おぉ、フューニャ…。泳げるようになってきたじゃないか」

フューニャは、えへん、とどや顔であった。

とても可愛い。

手取り足取り教えた結果、フューニャは浮き輪をつけてではあるが、一人でも数メートルくらいなら泳げるようになっていた。

偉い。

「頑張ったな、フューニャ」

「はい。私も両生類になれそうです」

別に哺乳類のままで良いんだけどな。

「まだ練習するか?それとも…折角だから、他のプールで遊ぶ?」

流れるプールとか…波の出るプールもあるようだ。

波はやめた方が良いかな。初心者には怖いかも。

流れるのも怖いか?浮き輪があれば大丈夫か。

「私、あのボートに乗ってみたいです」

フューニャは、流れるプールでボートに乗ってゆったりと流されている人を指差して言った。

成程、ボートか。

あれも楽しそうだな。

「分かった。じゃあ借りてこよう」

「はい」

そんな経緯で借りてきた、プール用のボート。

実は、俺も乗るのは初めてである。

やべぇ。ちょっと楽しそうじゃないか。

折角だから俺達も、流れるプールで桃太郎気分を味わうことにする。

ただ流されてるだけで何の面白味もないだろう、と思うかもしれないが。

これが、意外と楽しかった。

「面白いか?フューニャ」

「はい。楽しいです」

フューニャもご満悦の様子。良かった。

流される桃の気持ちが分かった。

「プールって、こんなに楽しいんですね」

そして、この嬉しい一言である。

こんなこと言ってもらえたら、来た甲斐があるというものだ。

しかし。

「ルヴィアさんがプールに行こうと言い出したときは、わざわざ水槽の金魚の気分を味わいに行くのかと思いましたが…」

…そんなこと思ってたの?

プール文化のない国、怖い。そういう発想になるんだ。

「金魚になるのもなかなか楽しいものですね」

「…そうだな」

別に金魚ではないがな。

ちなみにだが、この間の花火大会で取ってきた金魚、うちでちゃんと飼ってる。

うっかりしてると、夕飯の味噌汁の具にされてる可能性があると思って、しばらく注意していたのだが。

幸いなことに、まだ具にはされていない。全員生存している。

フューニャが毎日餌をあげているが、この間餌やり中にフューニャが、「たくさん食べて、大きくなるんですよ」なんて呟いているのを聞いてしまって以来。

怖くなったので、餌は俺がやることにした。

俺の考え過ぎだとは思うが、一応な。

「また来ましょうね、ルヴィアさん。また泳ぎを教えてください」

「あぁ。また来ような」

フューニャの可愛い水着姿が見られるのなら、俺もまんざらではない。

今度来るときまでには、俺も泳ぎの教え方を学んでおこう。

「…」

…今度…か。

平和過ぎて忘れそうになるが…。今度来るときは、『青薔薇連合会』を悩ませている憂いを、解決させてからにしたいものだ。
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