The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
一度気がついてしまうと、もう駄目だった。

『セント・ニュクス』は、俺達二人の組織のはずだった。

でも、実際に組織を維持しているのはルニキスの力だった。

俺は何をするにも、ルニキスに相談して、彼の意見を採用していた。

だってあいつの意見はいつだって、正しかったから。

たまに意見が対立することがあっても、ルニキスは何故そうした方が良いか、分かりやすく理を説いて説明することが出来た。

説得力もあって、皆ルニキスの言うことの方が正しいと判断した。

そりゃそうだ。俺には、ルニキスのように理路整然と考えることが出来ない。説明も下手くそ。

何より、ルニキスの意見を採用して、上手く行かなかったことなんてなかったのだから。

誰もがルニキスの言うことを聞くのは当然だった。

部下達は、俺に失礼なことは一度も言わなかった。皆俺に従ってくれていた。

でもそれは、俺がルニキスのパートナーだからだ。

ルニキスがいなかったら、誰も俺をリーダーだとは思わない。

二人のリーダーとは名ばかりで、実際のリーダーはルニキスだけ。

俺は、ルニキスにつき従う部下も同然だった。

誰から見ても、それは明らかだった。

それなのにルニキスは、俺に対して少しも偉そうに振る舞うことはなかった。

あくまでも、俺も『セント・ニュクス』のリーダーとして扱ってくれた。

俺の意見も必ず耳を傾けてくれた。何かを決めるときは、必ず俺の承諾を得てから決めた。

ルニキスは俺よりずっと賢くて、強くて、部下からも慕われて、それなのにそれを驕ることもなく、俺と対等に接してくれた。

俺は、猛烈に嫉妬した。
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