The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
思えば、最初からそうだった。

昔孤児院で、ギャンブルを一緒にやっていたときから。

俺はイカサマをして勝っていた。イカサマをしなければ勝てなかった。

でも、ルニキスはどうだ?

あいつは結局、自分でイカサマをすることはなかった。

イカサマをせずに、運と実力を駆使して勝ち上がっていた。

『セント・ニュクス』をここまで大きくしたのも、全部ルニキスの力があったから。

俺は主軸を決めただけで、実際に実行に移したのはルニキス。

戦うときもそう。計画を立て、指揮をし、部下達を率いるのはルニキス。

部下達と一緒に戦い、共に汗と血を流すのはルニキス。

何もかも全部、ルニキスの力でここまで来た。

俺ではない。

俺はルニキスの力を借りているだけで。

俺は、凡人なのだ。

ルニキスに会って、俺はそれを思い知らされた。

と言うより、思い出さされたのだ。

俺は貧民街生まれのクズ。学もない、才能も何もない凡人。

でも、ルニキスは違う。

あいつは貴族の生まれで、良い教育を受けて育ってきた天才。

結局、生まれが全てを決めてしまうんじゃないか。

生まれによって差別されない、貧民街のクズでものしあがれることを証明したくて、『セント・ニュクス』を作ったのに。

それなのに、結局組織を維持しているのは貴族生まれのルニキス。

これじゃ、何の意味もない。

俺はルニキスが憎くなった。段々と、相棒であったはずのルニキスが憎たらしくて堪らなくなっていた。

何でお前だけ。何でお前ばかり。

そんなに才能があるのに。なのに何でお前は、まだ俺を対等に見るんだ。

お前は偉い貴族様なんだろう。なら俺を馬鹿にしろよ。見下して笑ってみせろよ。

何でそうしないんだ。何で、あくまで俺を親友として扱うんだ。

やめろよ。

俺はお前の、そういう高潔なところを見ていると。

そんなお前に嫉妬してしまう自分の醜さに。

気が狂いそうになるんだ。

俺はお前に敵わない。何一つ敵わない。

それが許せなかった。

結局生まれが全てなんじゃないか。貧民街出身のお前は、どう足掻いても貴族生まれのルニキスには敵わないんだ。

かつて俺を馬鹿にした全ての人間に、そう笑われているような気がした。

そんなことはない。

俺は、ルニキスに勝てる。貧民街生まれの俺でも、貴族生まれのルニキスに勝つことが出来る。

そうでないと、俺の人生は何だったんだってことになるじゃないか。

弱者は結局弱者で、生まれながらの強者には絶対に敵わない。

そんなことを認めたら、俺は生きていけない。

ルニキスを認めたら、俺は俺でなくなってしまう。

だから、俺はあいつを切り捨てた。

でも、すぐにそうしようと決めた訳じゃない。

きっかけは…『彼ら』が現れたことだった。
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