The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「その『MY-3』ってのは何です?」
「…化学兵器です。新型の…」
…また化学兵器か。
奴らの十八番だな。
「それを使ったらどうなるんです?」
「詳しくは、聞いてません…。でも、グリーシュさんは…『青薔薇連合会』だけじゃない、この辺り一帯の人間を全て一掃する強力な兵器だって…」
「…」
「前に使った携行タイプの毒ガスとは比べ物にならない威力だって。扱いも難しくて、製造中の事故でもう何人も死んだって…」
…この辺り一体を消し飛ばす化学兵器、ねぇ。
「…それ、本当に使うつもりなんですか。グリーシュさんは」
「はい…。使用準備を進めろって、そう指示してるのを聞いたんです。あの声は本気でした。止めることは出来ません…。止めたら、僕達はグリーシュさんに殺されてしまいます」
少年は震えながらそう言った。
「このままじゃ、『青薔薇連合会』だけじゃない、何の関係もない人まで死んでしまう。それだけは止めないといけない…。そう思って、皆に話して、逃げてきたんです」
「…」
「それに…ここには、ルニキスさんがいるって噂だったから…」
…ルニキス、つまりルリシヤにすがり付くつもりで…ここに逃げてきたのか。
賢明な判断だな、おい。
グリーシュなんかより、この少年君の方がよっぽど賢いぞ。
「…ルリシヤ。あなたの元相棒は…本当に狂ってるようですね」
「…」
ルリシヤは答えず、悔しそうに唇を噛み締めた。
頭おかしいにも程がある。今まで出会ってきた馬鹿の中でもトップクラスの馬鹿だよ。
グリーシュと比べたら、ルアリスでも世紀の大賢者だな。
俺なんか神だよ。もう。
「この辺り一帯を吹き飛ばす化学兵器…。それが本当だとしたら、もう正気の沙汰とは思えない。マフィアの抗争じゃないよ。ただのジェノサイドだ」
さすがのアイズレンシアも、酷く険しい顔だった。
その通り。これはもう…ただの虐殺だ。
しかも、後先何も考えてない破壊行為。
そんな兵器が使われた後の帝都は、どうなるか。
人が住めなくなった廃墟だ。他に何も残らない。
おまけにここは帝都の一等地。ルティス帝国の経済の中心地だ。
そこを一瞬にして消し飛ばしたらどうなるか、アホでも分かる。
死者はとんでもない数になるだろう。
それだけじゃない、経済的にも長期に渡って甚大な被害が出る。
最悪、国が滅ぶ。
そのせいでまた多くの人間が犠牲になるだろう。
あいつらは、何か。国家転覆が目的なのか?何もなくなった廃墟のど真ん中に立つことが、奴らのゴールなのか。
間違いなく、グリーシュはそこまで考えてない。
奴の頭の中は、「『青薔薇連合会』を倒すこと」までで止まっているのだ。
その先がどうなろうと、国や自分達の滅びに繋がっていようと、『青薔薇連合会』を倒しさえすればどうでも良い。
気が狂ってるとしか思えない。
「…あなたがここに来た理由は、分かりました」
『MY-3』とやらから逃げろと。それは分かった。
でも、知りたいことはまだある。
「…グリーシュに、その『MY-3』を渡したのは誰ですか」
グリーシュは、確かに馬鹿だ。
でも馬鹿というのは元々、それほど脅威ではない。
だって、無力だから。
いくら馬鹿でも、馬鹿なことをする力がなければただの馬鹿なだけ。
それなのに、グリーシュは大馬鹿者の癖に、力を持っている。
化学兵器という、凶悪な力を。
だから、いるはずなのだ。
馬鹿なグリーシュに、凶悪な力を持たせて手のつけられない大馬鹿者に下手あげた人間が。
俺達が本当に戦っているのは、そいつなのだ。
「…化学兵器です。新型の…」
…また化学兵器か。
奴らの十八番だな。
「それを使ったらどうなるんです?」
「詳しくは、聞いてません…。でも、グリーシュさんは…『青薔薇連合会』だけじゃない、この辺り一帯の人間を全て一掃する強力な兵器だって…」
「…」
「前に使った携行タイプの毒ガスとは比べ物にならない威力だって。扱いも難しくて、製造中の事故でもう何人も死んだって…」
…この辺り一体を消し飛ばす化学兵器、ねぇ。
「…それ、本当に使うつもりなんですか。グリーシュさんは」
「はい…。使用準備を進めろって、そう指示してるのを聞いたんです。あの声は本気でした。止めることは出来ません…。止めたら、僕達はグリーシュさんに殺されてしまいます」
少年は震えながらそう言った。
「このままじゃ、『青薔薇連合会』だけじゃない、何の関係もない人まで死んでしまう。それだけは止めないといけない…。そう思って、皆に話して、逃げてきたんです」
「…」
「それに…ここには、ルニキスさんがいるって噂だったから…」
…ルニキス、つまりルリシヤにすがり付くつもりで…ここに逃げてきたのか。
賢明な判断だな、おい。
グリーシュなんかより、この少年君の方がよっぽど賢いぞ。
「…ルリシヤ。あなたの元相棒は…本当に狂ってるようですね」
「…」
ルリシヤは答えず、悔しそうに唇を噛み締めた。
頭おかしいにも程がある。今まで出会ってきた馬鹿の中でもトップクラスの馬鹿だよ。
グリーシュと比べたら、ルアリスでも世紀の大賢者だな。
俺なんか神だよ。もう。
「この辺り一帯を吹き飛ばす化学兵器…。それが本当だとしたら、もう正気の沙汰とは思えない。マフィアの抗争じゃないよ。ただのジェノサイドだ」
さすがのアイズレンシアも、酷く険しい顔だった。
その通り。これはもう…ただの虐殺だ。
しかも、後先何も考えてない破壊行為。
そんな兵器が使われた後の帝都は、どうなるか。
人が住めなくなった廃墟だ。他に何も残らない。
おまけにここは帝都の一等地。ルティス帝国の経済の中心地だ。
そこを一瞬にして消し飛ばしたらどうなるか、アホでも分かる。
死者はとんでもない数になるだろう。
それだけじゃない、経済的にも長期に渡って甚大な被害が出る。
最悪、国が滅ぶ。
そのせいでまた多くの人間が犠牲になるだろう。
あいつらは、何か。国家転覆が目的なのか?何もなくなった廃墟のど真ん中に立つことが、奴らのゴールなのか。
間違いなく、グリーシュはそこまで考えてない。
奴の頭の中は、「『青薔薇連合会』を倒すこと」までで止まっているのだ。
その先がどうなろうと、国や自分達の滅びに繋がっていようと、『青薔薇連合会』を倒しさえすればどうでも良い。
気が狂ってるとしか思えない。
「…あなたがここに来た理由は、分かりました」
『MY-3』とやらから逃げろと。それは分かった。
でも、知りたいことはまだある。
「…グリーシュに、その『MY-3』を渡したのは誰ですか」
グリーシュは、確かに馬鹿だ。
でも馬鹿というのは元々、それほど脅威ではない。
だって、無力だから。
いくら馬鹿でも、馬鹿なことをする力がなければただの馬鹿なだけ。
それなのに、グリーシュは大馬鹿者の癖に、力を持っている。
化学兵器という、凶悪な力を。
だから、いるはずなのだ。
馬鹿なグリーシュに、凶悪な力を持たせて手のつけられない大馬鹿者に下手あげた人間が。
俺達が本当に戦っているのは、そいつなのだ。