The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideグリーシュ

─────…その夜、俺はいつにも増してイライラしていた。

それも当然だ。昼間、十人ほどの古参の部下が逃げ出した。

逃げたからってどうにかなる奴らではないけど、それでも裏切られたとなると腹も立つ。

四人ほどは捕まえて、見せしめに殺してやったけど。

それでもまだ苛立ちが修まらない。

というのも、『MY-3』を使うことを指示したところ、製造に関わっている何人もの部下達が、「これだけは使いたくない」と言い出したのだ。

そんな腑抜けたことを言うのは、俺の部下だけだ。『愛国清上会』が派遣してくれた技術者は、一人としてそんなことは言わない。

揃いも揃って腰抜けばかりだ。『セント・ニュクス』の構成員達は。

もとはと言えば、ルリシヤの奴が甘やかすからいけないのだ。

だから、こんな腰抜けばかりになってしまった。

お陰で、『MY-3』の準備に遅れが出ている。俺の部下が何人も、作業を拒んでいるからだ。

仕方がないから、弱音を吐いて作業を拒む部下達は、全員銃床で殴り付けてやった。あれで言うことを聞くだろう。

それでもまだ言うことを聞かないようなら、一人二人、見せしめに殺してやれば良い。

そうまでしなきゃ動かないなんて、使えないにも程がある。

今更何を言ってるんだ。化学兵器なら、もう既に一度使ったじゃないか。

何で、二度目を拒む必要がある。

甘いことばかり言いやがって。戦争なんだから、人を殺すことを躊躇う必要なんてないのだ。

ましてや、奴らはマフィアなのだから。

殺されても文句の言えない連中だ。

そうだというのに、今更化学兵器を使いたくない、なんて…無能な奴らだ。

自分の部下に酷くイライラしていた。そのときだった。

「グリーシュさん!グリーシュさん!大変です!」

血相を変えた部下が、泣きそうな顔で飛び込んできた。

「何だ?」

「あ、『青薔薇連合会』に、基地を包囲されています!すぐに来て、指揮をしてください」

「…!?」

俺は勢いよく椅子から立ち上がった。何で?どうなってるんだ?

基地を包囲されてるって…何で?どうしてこの場所がばれた?

ここは『愛国清上会』が用意してくれた隠れ家なのだ。ばれるはずがない。

「どうしてここがばれた?何で『青薔薇連合会』が!?」

「分かりません!とにかく指揮を執ってください、今すぐに…」

「分からないじゃないだろ、それを調べるのがお前の仕事だろうが。この馬鹿!」

苛立ち紛れに、俺は部下を殴り付けた。
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