The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
基地の周りは、最早、阿鼻叫喚であった。

『青薔薇連合会』の突然の襲撃に、対応出来ている者はいなかった。

次々と仲間が撃たれ、倒れていた。

本当に、使えない部下ばかりだ。

すると。

「これは、グリーシュ殿。随分大変なことになってるようだな」

「あっ…お前」

見覚えのある部下だった。この男は…確か。

俺達が併合した、『厭世の孤塔』の残党…。

「丁度良い、俺は裏口から逃げるから、全線指揮を取ってくれ」

元『厭世の孤塔』の構成員だ。『セント・ニュクス』の使えない部下より、余程役に立つ。

しかし。

彼はこちらに、銃口を向けた。

「な…何を」

「『青薔薇連合会』には恨みがある。だが…それはお前達も同じだ。この機をずっと待っていたんだ。貴様に復讐する機会をな」

「…!!」

「グリーシュさん、危ない!」

傍にいた部下が、俺を突き飛ばしてくれなければ。

俺は今頃、蜂の巣にされていただろう。

この部下と同じように。

「ひっ…!」

「っ、待て!」

俺は急いで逃げ出した。『厭世の孤塔』の残党。もうすっかり俺達の仲間になったと思っていたのに。

なりふり構わず逃げ惑う。その間にも、何人もの部下達が撃たれて死んでいくのが見えた。

最早パニックだった。誰も指揮を取らない。

ただ、肉の壁になって撃たれるだけだった。

くそ。くそ。くそが!何でこんなことに!

「グリーシュさん!無事だったんですね、良かった」

「あっ…」

先程俺に襲撃を報告しに来た部下が、俺に追い付いた。

「フライデルさんと繋がったんです、これ…」

「貸せ!」

フライデルと繋がったという携帯を引ったくり、腹立ち紛れに唾を飛ばす。

「お前、今何処にいるんだ!すぐに『MY-3』を…」

『あぁ…グリーシュ殿。まだ生きていらっしゃったんですね。もう用済みだから、死んでもらっても良いですよ』

「…!?」

…今、何て言った?

「な、何を…」

『あなたは本当に便利な駒でしたよ。我々が少し煽れば、思い通りに動いてくれて…。化学兵器製造・使用の罪は、全部あなたが被ってくれる。出来れば『青薔薇連合会』を滅ぼすまであなたを利用したかったのですが…。残念ながらそれも叶いそうにないので、我々は身を引きます』

「フライデル、おい。どういうことだ。それはどういうことだ!俺に協力するって言っただろうが!俺を裏切るのか!」

『先に味方を裏切ったのは、あなたじゃないですか』

「…っ!」

それは…でも、フライデルがそそのかしたから。

俺だって、裏切りたくて裏切った訳じゃ。

『遅かれ早かれ、こうなることは分かってましたよ。めちゃくちゃですからね、あなたの組織は』

「…そんな…ことは」

ない、とは言えなかった。

今、この現状を見たら。

『まぁ、精々頑張って生き延びてください。それじゃ』

「おい、待て!まだ話は…」

急いで引き留めようとしたが、既に電話は切れていた。

「…くそっ!」

携帯を床に叩きつける。画面が割れ、粉々に砕け散る。

どいつもこいつも、俺を馬鹿にしやがって。

…逃げないと。俺だけでも…。俺がいないと、『セント・ニュクス』は終わり。

俺さえ生きていれば、いつでも再建出来る。

「…死ぬ気で食い止めろ。俺は逃げるからな。お前達、ここを死守するんだ」

「…グリーシュさん…」

「良いな!」

そう言い残し、俺は近しい部下だけを引き連れて、地下にある隠し出口に急いだ。
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