The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「グリーシュ、良いか…よく聞け」

ルレイア先輩なら、甘いと言うだろう。

でも、俺は。

あとほんの数十秒で生を終える友に、せめて安らかな気持ちで旅立って欲しかった。

「お前は貧民街のクズなんかじゃない。グリーシュ、俺はお前のお陰で生きることが出来たんだ。お前のお陰で俺は今ここにいられるんだ。…ありがとう」

「…」

「グリーシュ、お前は…俺の、一番の…大切な親友だ」

心からの言葉だった。

裏切られたからって。銃を向けられたからって。

俺達の間の絆が、それで消えてしまった訳じゃない。

少なくとも、俺はそのつもりだ。

グリーシュは笑った。今際の際で、彼は微笑んでみせた。

「お前…まだ、俺のこと親友だって…」

「あぁ。お前がいくら絶交だって言っても、それは譲らないからな」

「は、はは…。馬鹿だな、お前…」

あぁ、そうだ。

お前に負けないくらい、俺は馬鹿だよ。

馬鹿で、お人好しで…。でも、それで良いと思ってる。

それで良かったと思ってるんだ。今は。

「なぁ…ルリシヤ…。俺も…今、思えば…お前と一緒にいた頃が…一番…たのし…かっ…」

「グリーシュっ…」

グリーシュは、ごぽり、と血を吐いた。

目が段々虚ろになって、それでも弱々しく俺の手を握り返した。

「…ごめ…ん…な。信じ…なくて…」

「…もう、大丈夫だ。何もかも、もう大丈夫だから…。だから、もう休め。謝るなよ」

俺は笑った。泣きはしなかった。

最後に見せるのが、泣き顔なんて…情けないからな。

せめて、笑って見送ってやろうと思った。

信じなくてごめん、じゃない。

そんなの、お前が謝ることじゃない。

「…友達だろ、馬鹿」

俺からの最後の言葉が、グリーシュの耳に届いたのか。

彼は薄く笑った…ように見えた。

俺が、そう思いたかっただけかもしれない。

グリーシュはそのまま、永遠に目を閉じた。



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