The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルレイア

─────…ルリシヤとグリーシュの二人の、最期の別離を。

俺は、黙って眺めていた。

咄嗟に剣をぶん投げて、グリーシュを串刺しにしたことは、後悔していなかった。

だって、やらないとこっちが殺されてたし。

いずれにせよ…この男は殺さない訳にはいかないだろう。

化学兵器なんてものを持ち出した時点で。

「…」

息を引き取ったグリーシュの亡骸を抱いて、ルリシヤは肩を震わせていた。

…あんま見たくないなぁ。こういうの。

申し訳なくて見ていられないや。

すると、そこに。

「ルレイア」

「あ、ルルシー」

上を制圧していたルルシーが、地下に降りてきた。

「上は、もう終わったんですか」

「あぁ。制圧は完了した。…ほとんどの構成員が投降したよ」

「『厭世の孤塔』の残党は?中で暴れてたんでしょう?」

俺達がここに来たときには、既に内部分裂を起こしていた。

『厭世の孤塔』なんて癖の強い連中を入れるからそうなる。

結局…ルリシヤが危惧していた通りになった訳だ。

グリーシュは部下をまとめきれず、味方に裏切られて足元を掬われた。

「…そうか、死んだのか」

ルルシーは、肩を震わせているルリシヤを見て、ぽつりと呟いた。

ごめんなさい。俺が殺しちゃいました。

「…そっとしておいてやろう。ルレイア」

「…ねぇ、ルルシー」

「うん?」

俺はどうにも、あの二人が…他人事のように思えないんだよな。

前からそうだったけど。

「一歩間違えたら、ああなってたのは俺達かもしれないって…そう思うと、ちょっと怖くなりません?」

「…そうだな」

俺達は…ああはなりたくないなぁ。

いつまでも、ルルシーとは仲良くしていたいよ。

あんな風に死に別れるなんて、俺は今度こそ自殺するだろうな。

「…一つ聞いても良いですか?ルルシー」

「何?」

「ルルシーは、俺が羨ましいと思うことがありますか?」

「あるな。そりゃしょっちゅうある」

そう。

「そうですか。俺も…よくルルシーが羨ましくなることがあります」

「そうか」

「それを忘れないでいましょうね。俺達は」

「…そうだな」

多分…この二人が仲違いしたのは、それが原因だから。

どんなに愛しても、大切にしても、憧れても。

どんなに嫉妬して、羨ましくて、憎くなっても。

裏切っても、殺しても。

その人になれる訳じゃないんだよ。

結局自分は、自分以外の何者にもなれないんだから。

俺達は、お互いに足りないところを、お互いで補い合う。

…それが相棒ってものなんじゃないかと、俺は思うのだが。

そんな簡単なことが…グリーシュには分からなかったんだろうな。

…無理もない。

俺だって、ルリシヤとグリーシュを見て、初めて実感したんだから。

「…俺は、あなたを信じてますよ、ルルシー。あなたが俺を信じなくても俺はあなたを信じます」

「そうか。じゃあ俺もルレイアを信じるよ。ルレイアが信じなくなってもな」

良かった。

これで俺達は、ルリシヤ達のようにはならないだろう。

そう信じたい。
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