The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…そうだ、ルルシー。化学兵器工場の方は?もう片付いたんでしょうか」

工場自体は各地に複数あるそうだが。

一番先に押さえたいのは、例の『MY-3』とかいう化学兵器を造っている工場。

うっかり誤射して爆破しちゃいました(笑)なんてことになったら、かなり洒落にならないけど。

「そっちはアイズとアリューシャが制圧しに行ってるから、大丈夫だと思うが…」

「ふーん…。まぁ、あの二人なら任せても大丈夫でしょう」

俺とルルシーに負けないくらい良いコンビだからな、あの二人は。

それよりも、厄介なことがある。

「…『厭世の孤塔』を逃がしちゃったのはちょっと痛かったですかね」

「…それは仕方ないだろう」

「そうなんですけど…」

奴らが内部分裂して暴れてくれたお陰で、こっちの制圧が早く済んだのは嬉しいのだけど。

でも逃がしちゃったのは残念だ。

放っておいても大した勢力じゃないから、まぁ良いか。

更に、それより厄介なことがあるし。

「問題は、『愛国清上会』とやらの情報をグリーシュから聞き出せなかったことだな」

聞き出す前にぶっ殺しちゃったからね。やむを得なかったとはいえ。

「…でも、グリーシュのあの様子だと…多分締め上げたとしても、何も知らなかったと思うんですよね」

グリーシュもまた、『愛国清上会』の手のひらで踊らされたのだ。

そこそこ姑息な連中のようだし、知られて困るようなことは、グリーシュにも伝えていないはず。

グリーシュを締め上げても、多分何も出てこなかっただろう。

「ルリシヤには悪いですが、所詮グリーシュは『愛国清上会』の駒でしかありません。黒幕の『愛国清上会』を潰さないことには、何も解決しませんね」

「…だな」

化学兵器の使用をグリーシュに打診したのは、『愛国清上会』。

つまり奴らを潰さないことには、第二のグリーシュ、第三のグリーシュが生まれるだけだ。

それじゃ何も解決しない。堂々巡りだ。

目的は…何なんだろうな。俺達『青薔薇連合会』を潰すことも勿論だが。

何と言うか…平気で帝都をめちゃくちゃにするような化学兵器を使おうとする辺り、国そのものがどうなっても構わないという考えが根底にあるんだと思う。

『青薔薇連合会』を潰したい、までは分かる。俺達を潰して、俺達が今持っている利権を横取りしたい奴らは腐るほどいるだろう。

でも、何故そこで国まで巻き込む?

そんなことしたら帝国騎士団に睨まれるだけだし、仮に帝国騎士団まで潰したとして…ルティス帝国の覇権でも狙ってんのかね。

廃墟になった国の王になって、それでどうするんだ?

「…うん。やっぱり俺の最初の仮説が正しそうだなぁ」

「は?何だ、最初の仮説って」

「な~いしょ★」

ぱちんっ、とウインクして言ったが、ルルシーにがしっ、と腕を掴まれた。

「内緒じゃねぇ。言え」

「いや~んルルシー、いた~い」

「こら、はぐらかすな!」

だって。仮説が正しかったとしても、どうすることも出来ないんだもん。

敵の在り処が分かる訳じゃないし。

暗い雰囲気になるのは嫌なので、茶化してはいるが。

これは割と、深刻な問題である。
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