The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルアリス

──────…彼から電話が掛かってきたとき、俺は大事な会議の最中であった。

国内の諸機関の長官達が一堂に介し、祖国箱庭帝国のこれからの方針について話し合う、とても大事な国会。

余程のことがない限り、会議を中座して席を外すなんて無責任なことは出来ない。

ましてや。

友達から電話が掛かってきたので、ちょっと出てきます。なんて絶対に許されない。

…ただ一人、異国の友人を除いては、だが。

会議も大詰めという大事な時に、ユーレイリーはそっと俺の肩を叩いた。

「どうした?」

「坊っちゃん、その…。『ご友人』から電話が」

…ご友人?

たかだか友人からの電話で、会議を中断することは出来ない。そんなことはユーレイリーも分かっているはず。

それなのに、わざわざ声をかけてくるなんて…。

「…悪いけど、今は忙しいんだ。会議を中断する訳にはいかない。最優先事項が…」

「…坊っちゃん、ルレイア殿からです」

「済まない皆。ちょっと中断させてくれ。電話に出てくる」

ユーレイリー。それを先に言ってくれ。

この世で一番の最優先事項じゃないか。

会議を優先してルレイア殿を二の次にすれば、翌日には箱庭帝国の未来が消えてしまう。

俺は皆に断ってから、会議室を出た。

…それにしても、ルレイア殿から電話?

手紙でもメールでもなく、わざわざ電話してくるなんて。

何か、急ぎの用事なのだろうか。

箱庭帝国は、まだ通信体制がそれほど整ってはいない。

ルティス帝国のように、誰もが携帯電話を持っている訳ではない。そもそも電話機ですら、裕福な家しか備えていない。

『青薔薇委員会』本部も、それは例外ではない。

電話をするには、電話機がある電話室に行かなければならない。

俺は廊下を走った。ルレイア殿を待たせるなんて畏れ多いことをすれば、戦争になりかねない。

観測史上最速の速さで廊下を駆け抜け、俺は受話器に辿り着いた。

「はぁ…はぁ、る、ルレイア殿…た、大変お待たせしました…」

会議室から最速ダッシュでここまで来たが、ユーレイリーが電話を受けてから俺がここに来るまでの時間は、五分は下らない。

五分も待たされたルレイア殿が、どんな反応をするか。

嫌みの五つや六つで済めば、可愛いもの。

最悪、ルティス帝国まで土下座しに行かなければならないことになりかねない。

そのときは…祖国の平和の為だ。

誠心誠意を込めて、土下座しに行こう。
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