The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideフライデル

─────…何もかもが、想定外だった。

「同志フライデル!駄目です、北出口は塞がれてます!」

「東出口もです!『青薔薇委員会』の兵士が…」

「くそっ…。何故奴らがここを嗅ぎ付けた!」

一体、何処から情報が漏れているんだ?

俺は気を失いそうなほどの焦燥感に駆られ、思考がまとまらなくなっていた。

こんなはずではなかったのに。

グリーシュを騙して化学兵器を造らせ、『青薔薇連合会』と戦わせるまでは良かった。

『青薔薇連合会』を始末出来なかったのは痛いが、俺達は土壇場で『セント・ニュクス』を裏切って闇に潜み、また次の機会を狙うつもりでいた。

『青薔薇連合会』に復讐する機会を。

そして行く行くは、『青薔薇解放戦線』…今は『青薔薇委員会』などと名乗っているようだが。

あの簒奪者共に復讐する。そして、祖国を奪い返す。

その為に、俺達はルティス帝国に逃げてきたのだ。

それなのに。

何故、こんなことになった?

俺達は完全に出口を塞がれた状態にあった。

引き返せば、追いかけてきているであろう『青薔薇連合会』の幹部達と鉢合わせする。

出口に進もうにも、出口を見張っている『青薔薇委員会』の兵士達に捕まる。

この地下迷宮のような隠し通路に、完全に閉じ込められているのだ。

有り得ない。おかしい。そんなはずはないのだ。

そもそも何故この拠点が分かった?俺達は昨日、ここに来たばかりだ。

『青薔薇連合会』や帝国騎士団の目を誤魔化す為、俺達はほとんど二週間ごとに拠点を転々としていた。

今までそれで見つかったことはなかった。現に、最初に化学兵器を使った『セント・ニュクス』も、『青薔薇連合会』や帝国騎士団からの追跡を逃れてきた。

それなのに、何故見つかった?

何者かがリークした?それも有り得ない。新しい拠点の移転先は、いつだって俺が最も信頼する部下数名にしか伝えていない。

彼らが漏らすはずがない。

そうだというのに、現にあいつらは、まるで未来予知でもしたかのように俺達を見つけ、そして襲撃しに来ている。

おまけに、出口に張っている『青薔薇委員会』の兵士だ。

何故このタイミングで奴らが出てきた?

何故この隠し通路の出口が、箱庭帝国の領内であることを知っている?

ルアリスが何か感付いた?有り得ない。あんな世間知らずのガキが、そこまで図れるはずがない。

だとしたら…指示した者がいるのだ。

『青薔薇委員会』の兵を動かして、国境付近を固めろと。

指示した何者かがいるのだ。

「…くそっ!」

俺達はこんなところで捕まる訳にはいかない。

なんとしても、逃げ延びなくては。

そうしなければ、ルアリスなんて青二才に祖国を乗っ取られてしまう。俺達は負ける訳にはいかない。

箱庭帝国を、これ以上歪んだ方向に変えられるのは我慢ならない。

あの国を正しく統治出来るのは、我々だけなのだから…!



…しかし。



「鬼ごっこは俺達の勝ちのようですね」

「ひっ…!」



俺達を、嘲笑うかのように。

死神に肩を掴まれた。



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