The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルアリス

─────…遡ること、一週間前。

箱庭帝国『青薔薇委員会』本部に、一本の電話が掛かってきた。

「彼」からの電話が来たと聞き、食事中だった俺は、スプーンとフォークを放り出して全力ダッシュし、受話器を取った。

「お、お待たせしました…ルレイア殿」

無茶苦茶言ってるのは理解してるが。

頼むから、ルレイア殿。電話をする前に、「これから電話します!」と宣言してから電話してくれ。

俺の心臓が持たない。

『こんにちは、ルアリス。今、暇でした?』

飯食ってました。とも言いづらいので。

「は、はい…。大丈夫です」

そう答えておく。暇だったということにしておこう。

『そうですか。いやね、俺も暇だったんですよ。だから不出来な弟子とお喋りしようと思って』

「…はい…」

不出来で済みません。

言い返す言葉が思い付かない。俺が彼にとって不出来な弟子なのは言うまでもないことである。

そしてルレイア殿は、いつもの質問をした。

『それでルアリス。セトナさんとの結婚式の準備は進んでます?』

「けっ…こ…」

…またですか。

…またそれですか。

…と言うかそれ、本気なんですか?

ルレイア殿の悪い冗談だと思っていたかったのだが…。本気にしてるのか。

『ちょっと。早いところ進めてくださいよ?春に間に合いませんよ』

「は、はぁ…」

本当に春に結婚式するんですか?

え?あれ本気…?

もし本当に本気なのだとしたら、いざ春になったとき、結婚式なんてしませんと言ったら…恐ろしいことになるのでは?

その時点で頭の中でパニックを起こしていた俺だが、ルレイア殿はお構いなしに話を続けた。

『ところでですね、ルアリス。俺、言ってなかったですけどね』

「は…はい?」

『実はもうすぐ、誕生日なんですよね。来週の◯日』

「…」

…そうなんですか。

それは知りませんでした。

『…誕生日なんですよね』

二回言われた。

「…そうですか…」

『そうなんです』

それは…その、あれかな。

誕生日プレゼント寄越せっていうあれ…。

『じゃ、そういうことなので』

「あっ、ちょ、ルレイア殿、まっ…」

ぶつっ。ツーツーツー…。

「…」

…切れちゃった。

ルレイア殿、あなた俺から誕生日プレゼント欲しくて、わざわざ電話してきたんですか?

…まぁ、あの人は…そういう人だよな。

それで納得してしまえるのだから、ルレイア殿はさすがである。
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