The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
ルレイア殿が颯爽と帰国してから、俺はほっと息をついた。

別に彼が来るのが嫌だった訳ではないが…。

何と言うか、ルレイア殿が帰ると…こう、嵐が去った、みたいな気分になる。

何度も言うけど、彼に会うのが嫌な訳ではない。

ただ、毎回振り回され過ぎて疲れるだけだ。

ほら、遠方に住んでる孫が正月に訪ねて来るのと一緒。来たときは嬉しいんだけど、帰ったときはほっとする。そんな感じ。

しかも、あの人のあのスピーチ。

「…あれ、脅しじゃなかったのか…」

あんなに急いで結婚を進める必要はなかったのか。

何だか、こう…とてもがっくり来る。

…いくらなんでも、冗談がきついですよ。ルレイア殿…。

まぁ、彼らしいと言えば彼らしいが。

「まぁ、良かったじゃないか。ルレイアがああでも言わなきゃ、結婚式なんてまだまだ十年後、果ては二十年後になっていたぞ、きっと。二人して奥手なんだから」

と、ヴァルタ。

それは…そうかもしれないが。

お互いこう…牽制をし合って、いつまでも進展しなかった可能性はある。

いや…俺はそこまで奥手ではないと思いたい。

確かに、ルレイア殿が背中を押し…いや、蹴っ飛ばしてくれたからこそ、無事にセトナ様と結ばれたのだと言われれば…その通りだ。

ルレイア殿も言うだろう。「結果オーライじゃないですか」と。

その通りだけど、でもそうじゃないのだ。

何と言うか…俺の言いたいことが分かるだろうか。

しかし、セトナ様は。

「私は…ルレイアさんに感謝してます。彼のその冗談のお陰で…今日という日を迎えられましたから…」

「セトナ様…」

「何だかんだと周りを巻き込みはしますけど、彼のすることは結局良い方に転ぶんですね。それも彼の魅力なんでしょうね」

…そう言われてしまうと、言い返す言葉もない。

ルレイア殿の魅力…か。

恐ろしい魅力だが、俺達が彼に救われたのも事実。

俺達にとっての大恩人であることにも変わりない。

まぁ…あの人が俺に気を遣う、控えめな人になったら…逆に気持ちが悪くて鳥肌が立つだろうからな。

ルレイア殿は、あれくらいで丁度良いのだ。

…ただし、今回みたいな悪質な冗談は…これっきりにしてもらいたい。

多分…無理だろうとは思うけど…。
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