The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
ルティス帝国への帰りの飛行機にて。

「フューニャ…。大丈夫か?」

「何がですか?」

懐かしい故郷を後にするというのに、あっけらかんとしたフューニャである。

…無理に強がっている…という訳ではなさそうだが…。

「…ショックじゃないのか?生まれ故郷があんなになってるのに…」

「あら、そんなこと?箱庭帝国では珍しくありませんし…。それに、もう心の整理はついてます」

…そういうものか?

「それより、あなたに私の生まれた国を見せることが出来たので、私は満足です」

「…フューニャ…」

…そうか。

俺も、フューニャの生まれた国をこの目で見ることが出来て良かったよ。

フューニャを苦しめたのはこの国だが、でもフューニャを生んでくれたのもまた、この箱庭帝国なんだよな。

そう思うと、なかなか割り切れないものだ。

「これで心置きなく、ルティス帝国に帰れますね」

「慌ただしくてごめんな。もう少しゆっくりさせてやれたら良かったんだが…」

フューニャはともかく、俺はそんなに長く休暇は取れないし…。

「構いません。今回の目的は、ルアリスの結婚式に参列することだったんですから。それに…こうして、あなたに私の故郷を見せることが出来ましたし」

「…やっぱり故郷で暮らしたいなって思った?」

「愚問ですね。前にも言ったじゃないですか」

フューニャは少しも未練がましい表情を見せず、むしろ晴れ晴れとした顔で、飛行機の窓から去り行く故郷を見た。

「私の故郷はこの国。でも、私の居場所はあなたの隣です」

「フューニャ…。そうか」

じゃあ…帰って、良いんだな。

二人で。

明日からは、またルティス帝国で…一緒に暮らそうな。

「…それに、箱庭帝国でしか買えない呪術道具も仕入れられましたし。これでしばらくは安全ですね」

は?

…え?

フューニャさん、今小さい声で何か、恐ろしいことを言わなかったか?

安全って何が?

やけにお土産の袋が多いなって思ってたが…。もしかしてあれ…全部。

「フューニャ…。何買ったの…?」

「大丈夫です。荷物検査にはギリギリ引っ掛かりませんから」

ギリギリって?

そんな限りなくアウトに近い「お土産」を買い込んでるの?

「…まさか…とは思うけどさ。フューニャ」

「はい?」

「その…。また何か…骨…とか買ってないよな?」

あのときの…あの骨は、鶏さんの骨だよね?

お昼に食べた手羽元なんだよね?

するとフューニャは、しばし無言でこちらを見つめ。

「…」

…すっ、と目を逸らした。

…やべぇ。

フューニャを怒らせでもしたら、俺は謎の力によって窒息死してしまう恐れがある。

ルレイアさんほどではないが、恐ろしい嫁だ。

…でも、俺はそんなフューニャが大好きだ。





END
< 767 / 791 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop