The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
俺はグリーシュが死んでから、毎月のように、彼の月命日に墓参りに訪れる。

先輩達も特に触れようとはしない。毎月決まった日にちに「ちょっと出掛けてくる」と言って、行き先を告げずに外出する俺を。

あらそう、行ってらっしゃい、と何も聞かずに送り出してくれる。

アリューシャ先輩はほぼ必ず、「お土産買ってきてな!」と言ってくる。

だから俺は、毎回墓参りの度に、帰りにお土産を買って帰る。

別に嫌じゃない。墓参りでちょっとしんみりした後は、帰って皆でお菓子でも食べながらわちゃわちゃ騒ぎたいから。

グリーシュ…。死んだ人間にこんなこと言うのは変かもしれないが、あいつ、あっちでも元気にしてるかなぁ。

死んでるから…元気…ではないかもしれないけど。

「…来たぞ、グリーシュ」

俺はグリーシュの墓標の前に、持ってきた花束を置いた。

あいつ素直じゃないから、花なんて要らねぇよ、なんて言ってるかもしれないけど。

ごめんな。今度お酒でも持ってくるよ。

「この間な…初めて箱庭帝国に行ってきたんだ」

俺はお墓に向かって、一人で話しかけた。

心の中で話しかけても聞こえるのかもしれないけど。

「ルレイア先輩の友人の結婚式でな。あれ以来ルレイア先輩、ルルシー先輩に毎日結婚結婚せっついてて、ルルシー先輩が辟易してる」

この間なんてルルシー先輩、あんまりルレイア先輩がうるさいからと、ガムテープでルレイア先輩の口を塞いでた。

ルルシー先輩も大変な人に好かれたもんだな。

ま、俺が言えた義理じゃないが。

「あれもあれで、一つの親友の形なんだろうな…」

でも…あの二人に関しては…親友、とは言えないかもしれない。

俺に言わせれは、あれは…親友と言うより…物凄く依存し合った夫婦?みたいな。

いや、夫婦ですらないな…。あの二人を表す上手い言葉が見つからないけど、かなり破綻した関係なのは確かだ。

あの二人に関しては、それで良いのだ。

周りがどう思おうと関係ない。大事なのは、あの二人が仲良しであることだけ。

仲が良いなら、それで良かろうなのだ。

そして俺は、そんな二人を見守っていこう。

「…俺と、お前みたいな…悲しい関係にならないように、な」

もし二人の仲が拗れそうになったら、俺が二人の仲を取り持って、支えよう。

二人を強引にでもふん縛って連れてきて、無理矢理でも手を繋がせて仲直りさせよう。

それが、俺なりの…禊、だ。

そう思うのは、間違いだろうか。

なぁ、グリーシュ。

…間違っていたとしても、良い。

「俺はあの二人には…いつまでも仲良しでいてもらいたいからな」

…なんて。

墓に向かって話しかけるなんて、端から見たら結構クレイジーだよな?

人が見たら、「あっ、あれヤバい人だ…」って思われそう。

…仕方ない。帰るか。

「…じゃあな、グリーシュ。また来るよ」

お土産、買って帰ろう。

何にしようかな。今日は…ケーキ?プリン?チョコレート?

…よし、今日はプリンにしよう。

きっと皆、またルルシー先輩の部屋に集まってるだろう。

ルルシー先輩は溜め息混じりに、くっついてくるルレイア先輩を延々と引き剥がしてるだろう。

あの楽しい、幸せな輪の中に自分が当たり前のように入れるなんて…奇跡のように思えた。







END
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