The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
で、『frontier』の熱狂的ファンである俺達も、その写真集は当然買う。

でも、買うだけなら何処ででも買える。何なら出版社の女性をたらし込んで、発売前にフライングゲットすることも不可能ではない。

それなのに俺達が、わざわざ発売日に本屋に足を運ぶ理由。

それが、この握手会である。

「動画は山ほど観ましたし、ライブにも行きましたけど、直接『frontier』と顔を会わせるのは初めてですからね~」

彼らはあまり、握手会やサイン会の類は行わないので。

今回は本当に特別だ。この機会を逃す手はない。

「仕事じゃないじゃねぇか。そりゃ書いてる訳ないだろ」

こんなチャンス滅多にないというのに、ルルシーはこの言いぐさ。

「お前らな、『青薔薇連合会』の幹部ともあろう者が、仕事放り出してアイドルの握手会なんて…。…いや、それはもう良い。お前達が仕事をサボって遊び回るのはいつものことだからな。それを言い始めたら、お前達に言い聞かせるより前に俺が禿げる」

あらやだ。それは大変。

「だから止めはしない。でも俺を巻き込むな」

あらやだ。それも大変。

ルルシーったらもう、頭堅いんだから。

「ほらほら、行きましょうね~ルルシー」

こうなったら実力行使である。

俺はルルシーの腕をがっちりと掴み、強引に引き摺った。

「ちょ、馬鹿!行かないって言ってるだろ!離せ!」

「全くもう…。我が儘は良くないぞルルシー先輩。後でお菓子買ってやるから」

「俺はガキか!」

「そうだルル公!おーじょーぎわが悪いぞ!」

「そうよルルシー。ルルシーが来なかったらルレイアが悲しむわ」

そうそう。そうだよ。

「良いかいルルシー。今回の握手会ね、チケット倍率、物凄く高かったんだよ。そこをルレイアがチケット会社の女性をたらし込んで、何とかゲットしたんだから。行きたくても行けない人がいるんだよ。感謝して行かなきゃ」

「はぁぁ…!?頼んでねぇよ俺は!」

「ったく、ガキみたいなこと言うなールル公は」

「お前にだけは言われたくねぇ!」

「ほらほら、ルルシー行きましょうね~。俺が一緒に行ってあげますからね~」

「こらっ、ルレイア…。ったくお前と来たら!」

俺はルルシーを強引にぐいぐい引っ張り、半ば強制的に握手会に連れていった。
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