The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
いざ、握手会。



アイドルって、俺、初めて会ったけど。

良いもんだね。やっぱりオーラがある。

早く順番来ないかな。

「並んでる人はやっぱり、女性が多いですね」

「そりゃあな…。メンバーはほとんど男だからな。女性ファンの方が多いだろ」

特にこのメインボーカル、とってもイケメンだもんね。

女の子がきゃーきゃー言いそうな顔してるよ。

ちょっと嫉妬しちゃう。

一方で、紅一点のベーシュちゃんの列に並んでいるのは、やっぱり男の方が多い。

俺もあっちに並ぶべきだったかな?

などと考えていたら、ようやく順番が回ってきた。

前に並んでいた女子高生っぽい女の子が、「これからも頑張ってください!」と言ってほくほくと立ち去っていくのと同時に、俺はずいっと前に歩み出た。

…へー。これが『frontier』のメインボーカル。

間近で見たのは初めてだが、やっぱりイケメンだな。

俺に似てるわ。

「こんにちは」

にこっ、と愛想良く笑って彼が差し出した手を、俺は両手で包み込んだ。

こういうときって、何て言えば良いんだっけ?

何を言うか決めてなかったけど。

いつも動画観てます!とか?いつもCD聴いてます!とか?

さっきの女の子みたいに、これからも頑張ってください!とか?

どうせなら、そんな在り来たりなことじゃなくて…。少しでも印象づけてもらう為に、ちょっと機転の利いたこと言った方が良いよね。

よし。

「初めまして。あなたイケメンですね。俺のハーレムに入る気はありませんか?」

「えっ…」

後ろに並んでいたルルシーが、ずるっ、とずっこけていた。

メインボーカル君もぽかーん顔。

「は、ハーレム…?」

「俺の愛人にならないかってお誘いなんですけど」

「あっ…愛人って…。い、いえ…ごめんなさい。ちょっとそれはご遠慮させてください…」

「なぁんだ。残念」

是非とも入って欲しかったのか。

まぁ、駄目元だったし。良いか。

「仕方ないですね。じゃ、俺これからもあなたのこと見てますから。あなたが何処でどんなことをしていても、俺はずっとあなたを見守ってますからね…?」

「…あ、ぇ…はい…。それは…どうも…」

あれ?心からの応援の言葉のつもりなのに。

何?この微妙な反応。

「それじゃ、お元気で…。また会いに来ますね?」

「は、はい…。ありがとうございます…」

うふふ、と笑って俺は彼の手を離した。

するとすかさず、後ろに並んでいたルルシーが。

「…済まん。あいつの連れなんだが…。奴は俺が首輪をつけて監視しておくから、心配しないでくれ」

「あ、はい…」

「いつも良い歌をありがとう。それじゃ」

焦ったようにそれだけ言って手を離し、ルルシーは俺のもとに小走りで戻ってきた。

「いやぁ、ルルシー。良い体験でしたねぇ。イケメン見てると無意識にムラっと…」

「…この馬鹿!」

俺が折角感想を語ろうとしたのに、べこしっ、とルルシーにはたかれてしまった。

酷い。
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