The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…そうか。やはり…『青薔薇連合会』は断ったか」

「はい…。ヴァルタさんからの連絡によると…条件が弱い、と」

「…弱い…か」

あれでも、最大限…捨て身の覚悟で提示したものだったんだがな。

やはり…マフィアを味方にするのは無理だった。

「マフィアの言うことですから…仕方ありません。それに…マフィアに借りを作らずに済んだのですから、その点では良かったではありませんか」

ユーレイリーは、そう言って俺を慰めてくれた。

「そうだな…」

マフィアなどに借りを作って、革命後もその借りを口実に、粘着されては堪らないからな。

確かにユーレイリーの言う通り、マフィアに借りを作らずに済んだ。そう思えば少しはましだ。

マフィアと言うのは、蛭のような存在だ。

一度吸い付いた相手には、最後の一滴まで血を搾り取る。

そんな奴らに助けを求めようとしたのだから、俺達も随分必死なことだ。

そう自分を慰めても、やはり落胆は隠せない。

…例え相手が悪魔の類であろうとも、憲兵局ほど怖くはない。

毒を以て毒を制し、それで国が平和になるのなら、俺はそれでも良いと思っている。

もし彼らが仲間になってくれていたら…随分と楽になっただろうに。

でも…断られたのだから仕方ない。

切り替えるしかない。

それに。

「帝国騎士団が協力してくれるのは有り難い」

『青薔薇連合会』は、元々駄目元だったのだ。

本命は、帝国騎士団だった。

帝国騎士団なら、革命後も難癖をつけて執着されるという心配はない。

背後から撃たれる心配もない。

何せ彼らは、俺達と同じ…正義の組織なのだから。

仲間として、これほど心強いものがあろうか。

だから、帝国騎士団からの協力はなんとしても取り付けたいと思っていた。

そして、ラシュナは見事にやり遂げてくれた。

帝国騎士団の協力を得られたことは、非常に有り難いことだ。

とはいえ。

「…でも、帝国騎士団からの支援は、経済的支援に限られます。これは…少々痛いですね」

「…そうだな」

金を出してくれるのは有り難い。でも…戦力を貸してくれる訳ではない。

革命が本格化すれば、憲兵局軍との戦闘は避けられないだろう。

資金には困らないから、金をばらまいて革命軍のメンバーを増やすことは出来る。衣食を保証するから一緒に戦ってくれと触れ回れば、協力者は増えることだろう。

でも、それで革命軍のメンバーを増やしたところで…。現状、俺の仲間達は…烏合の衆なのだ。

我が国の国民の大半は、幼い頃から洗脳教育だけを受け続け、戦うことを知らず、自分で自分のことや自分の国のことを考えもせずに生きてきた。

反乱を起こそうなんて、考えもしないように洗脳されてきたのだ。

そんな国民に、金をあげるから一緒に戦ってくれと言っても…どれだけ協力者がいることか。

憲兵局に逆らうことへの恐怖を、生まれたときから植え付けられてきた国民達なのだ。

彼らは何も悪くはない。悪いのは…そういう風に洗脳をした、憲兵局なのだから。

だから、戦力は帝国騎士団に期待したかった。それが本音だ。

でも…帝国騎士団は頼れない。

「…こうなっては仕方ない。我々だけでやるしかない」

経済的支援を受けられるだけでも、充分だ。

むしろ大盤振る舞いと言って良い。門前払いで断られてもおかしくなかったのだから。

「協力者が増えただけでも喜ぼう。これで俺達は…計画を進められる」

「はい。坊っちゃん」

まずは、帝国騎士団から送られてきた潤沢な資金を用いて…革命軍の規模を大きくすることに専念しよう。
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