The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…うぉっ!?」

最近俺は、もうオルタンスがいかに妙な言動をしていても、無視することにしていた。

双眼鏡片手に窓に貼り付いていようが、携帯の待受を見ながらにやにやしてようが、無視だ。

そう固く決意していたというのに、俺はこの日、オルタンスの格好を見て、声を出さずにはいられなかった。

「お前、何だその格好!?」

「ん…?」

オルタンスは、包帯まみれだった。

頭、首もと、腕、胴体、足。

何処もかしこも、血のついた包帯でぐるぐる巻き。

…どうなってるんだ?これは。

まるで派手な交通事故にでも遭ったかのようだ。

「どっ…どうしたんですかオルタンス殿!その姿は!」

これには、通りすがりのルーシッドもびっくり。

ルーシッドじゃなくても、こんな姿を見れば驚いて声をあげるだろう。

「ま、まさか『青薔薇連合会』ですか?それとも他の敵対組織と抗争に…!」

「…?」

オルタンスにここまでの大怪我をさせられる者は、ごく一部に限られる。

これはただごとではない。

故に、ルーシッドは酷く焦っていた。

けれど、当のオルタンスはこのきょとん顔。

…何だろう。なんか察した。

焦り顔のルーシッドを見て、オルタンスは不思議そうに首を傾げながら、俺をじーっと見つめた。

「…俺を見るなよ」

「…?ルーシッドは何を言ってるんだ?」

「お前こそ何をやってんだ」

その格好は何なんだ。

「??あの…オルタンス殿、怪我…されたんですよね?」

ルーシッドは疑問符を浮かべながら、そう尋ねた。

包帯を巻いてるんだから、怪我をしていると思うのは当然だ。

だがルーシッドよ。よく見てみろ。

これだけ包帯を巻いているというのに、オルタンスはぴんぴんしている。

まるで健康体ではないか。

そして…その包帯についている、赤い血らしき染み。

よく見たら…あれは血ではない。

ただのペイントだ。

つまり、これは。

「…仮装か何かか?」

「勿論だ」

どや顔するなよ。ぶん殴りたくなっただろ。
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