The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
革命軍の拠点は、ルティス帝国に構える。

これは早い段階から決めていたことだ。この国の中に拠点を構えることは不可能だから。

いくら帝国騎士団が支援してくれようとも、この閉鎖された箱庭帝国の中にいては、身動きが取りづらい。

それどころか、俺達の動きを悟られ、憲兵局に捕まってしまう恐れもあった。

それなら、危険を承知で、国外に出た方が良い。

俺に協力してくれたルティス帝国の彼も、同意見だった。

だから、俺達はその夜…国境を越えた。

まず、夜間警備に当たっていた憲兵局員を全員拘束し、無力化した。

局員が仲間を呼ぶその前に、全員が国境を抜けてしまう予定だった。

夜間警備に当たる局員はそう多くない。奇襲すれば、拘束するのは簡単だった。

でも、殺しはしない。俺達は革命を起こそうとしているが、人殺しをしたい訳ではない。

拘束はさせてもらったが、命までは奪わなかった。

無益な殺しは絶対にしないこと。これだけは、革命軍全員に徹底していた。

俺達は正義の側にいなければならないのだ。

いかに憲兵局が憎かろうとも。

人を殺せば、憲兵局のやり方と同じになってしまうから。

だから、必要最低限しか殺さない。

しかし…拘束された憲兵局員の、青ざめた顔を見ていると…そうも言っていられなかった。

俺達が殺さなくても、どうせ彼らは死ぬのだ。

みすみす革命軍に拘束され、国内の反乱分子をよその国に逃がしてしまったその罪を、憲兵局が許すはずがない。

俺達が今ここで彼らを殺しておいた方が、彼らにとっては良いのだろう。

でも、殺す訳にはいかなかった。

革命軍が憲兵局員を殺したとなれば、憲兵局に俺達を糾弾する口実を与えてしまうことになる。

仕方なく、俺達は局員をその場に置き去りにして、急いで革命軍のメンバーに国境を越えさせた。

当然、俺もだ。

そして何より。

「セトナ様、大丈夫ですか」

「は、はい…。平気です」

俺は、傍らの少女に声をかけた。

平気だと強がってはいるが、その顔は青ざめているし、息も荒い。

自分のやろうとしていることの重大さに、怯えているのだろう。

その気持ちはよく分かる。

俺だって、足が震えてしまいそうなのを必死に堪えているのだから。

俺には革命を起こした責任がある。怖がっている訳にはいかない。

「国境を越えれば、あとはティターニア家が匿ってくれます。急いで」

「はいっ…」

セトナ様は、この革命において絶対に欠けてはならない存在。なんとしても逃がさねば。

するとそこに、息を切らしたユーレイリーが走ってきた。

「坊っちゃん!急いでください。早く!」

「ユーレイリー、どうした?」

「憲兵局の、増援が駆けつけているとのことです!」

「!」

そんな…こんなに早く。
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