レンアイゴッコ(仮)
『東雲を選ばないなんて、見る目ない女の子だね』

去年だったか、つい、うっかり飲み会で話すと、

『俺の好きな女の悪口言うな』

なんて、空の割り箸の袋でぺちぺちと頭を叩かれた。

『つか、落とせない俺のせいだから』

東雲の目に甘さが閉じ込められたのを見た。

『周りは囲ってるハズなのに、上手くいかないもんだな』

東雲のくせに女の子を庇うじゃん。すごく愛されてるじゃん。なのに、振り向かれないって、お気の毒……。

『どんまい。失恋したら慰めてあげるよ』

『おー、よろしく』

東雲の恋バナは同期飲みの間で定番化しており、度々ネタにされている。なお、失恋したというのは今のところ聞いていない。



𓂃𓈒 ❅ *



「ふぁ、眠……」

「まだ寝るな、歯磨きして」

「うん、歯磨きね、歯磨き」


東雲の家にたどりつくとお風呂を先にいただき、ソファーの上で寛いでいた。東雲の家はあまり生活感がない。言ってしまえばホテルのようだ。東雲は長男なのか世話焼きらしく、毎回私は介助されている。歯磨きしなきゃと思うけれど、色んなことが起きてパニックになった感情がようやく落ち着き、眠い。
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