レンアイゴッコ(仮)
「そ。力になれて良かった。じゃあまた来週!」

全部、東雲の思い通りになんてさせてやらない。やりたくない。対等でありたいと思ったのも、そうしなければ、もっと東雲に甘えてしまいそうだからだ。

くるりと背を向けて歩き始めた。


「(……平然とうそつかないでよ)」


酔ったら好きな人に会いたくなるというのなら、私に感謝する理由が分からない。

すごく可愛くて、放っておけないという好きな人に、今すぐ会いに行くんでしょ。

けれども、東雲は私を追いかけては隣に並ぶ。

「なに急に拗ねてんの?」

上から声が落っこちる。近い場所で。

「拗ねてませーん」

否定しながら、拗ねている自分に気づかされる。
そんな私を東雲は深追いしない。

「お前酔うと幼くなるよな」

「そんなことないもん!」

「貶してるんじゃなくて、素直で可愛いって意味」

ああ、もう。

調子が狂う。狂わされている、自覚がある。

対象外と対象の線引きが曖昧に濁される。

穏やかに、けれども確実に。

「…………東雲は酔うと破壊力増すのね」

「破壊?何か壊した?」

無愛想、改め、天然。

「例えよ例え!それより、私の家じゃなくて東雲の家で飲み直そ」

「了」

反則技に心臓への負担を感じながら、短期間で通い慣れてしまった、東雲の家への最短距離を歩いた。
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