レンアイゴッコ(仮)
〈悪い。30分には出るから近くのカフェで時間潰して〉

〈ていうかいつでも良いよ。次回でも良いよ〉

〈終わらす。ひとりでいる時はイヤホン耳に入れて、スマホか読書で〉

……読書ってなんだ。

というか、さっきのホテル騒ぎがあったので、リスケで構わなかった。

それに私は定時で上がれたけれど、東雲は違う。東雲の分量が圧倒的に多いので、私が先に終わるのは出勤したその時から分かっていた。

たった30分の残業であれを終わらせる東雲がバケモノなのだ。


屋上に水族館が入るビルの1階はカフェも併設されているので、言われた通りイヤホンを耳に入れて東雲を待っていた。

〈俺の分のブラックコーヒー頼んで〉

追加で言われ、もう終わるのかと一応頼んで隣に置いた。

〈今会社出た〉

そんなメッセージが届いたのは10分後だった。東雲が到着するにはまだ時間が掛かる。

〈お疲れ様。気をつけて〉

東雲は案外マメなタイプで、到着するまで私とメッセージをやり取りし、たまに〈今この辺り〉と街並みを切り取った写真を添付してくれたから〈今この辺り〉と、私もコーヒーの残量を写真で送ったりした。

戯れのようなやり取りを何度か繰り返したあと、トントンと肩を軽く叩かれた。イヤホンを抜いて振り向く。
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