レンアイゴッコ(仮)
大事にされてしまっている。
それも、びっくりするほどほど丁寧に。
たどり着いた水族館は時間も時間なので人もまばらで、静かで仄暗く幻想的な空間が続いていた。
水族館なんていつぶりかな……。
仕事ばかりの忙しない毎日は息苦しく、狭いながら悠々と泳ぐ魚たちの方が何だか自由に見える。
熱帯魚の展示コーナーにて、空き瓶に見立てた住処の中で、仲睦まじく寄り添う二匹の魚がいた。
パステルイエローの小さな魚はベニハゼの一種で、魚には珍しくとても一途で、どちらか一方が死ぬまでペアを続ける魚だと、手書きポップで説明されていた。
「浮気しないなんて、健気ね……」
「妃立の地雷は浮気」
東雲はまるで私のプロフィールのようにつぶやくので、カチンと火花が散った。
「だれだってそうでしょ」
浮気はやだよ。するのもされるのもやだ。好きな人がいるのに、他の人を好きになる意味も私には理解できない。
「俺は妃立に浮気されても許すよ」
「それは……」
「(本気じゃないから、でしょ)」
好きな人がいるのに、他の人と付き合う東雲の行動も分からない私は、その、たった一歩が踏み込めない。