レンアイゴッコ(仮)
満足いくまであざらしを堪能したのち、くらげに癒され、あっという間に時間は過ぎた。


「腹減ったな。何食う?」

「んー……お寿司」

「魚見たあとに寿司かよ……」

そんな話をしながら歩いていると、出入口付近に位置する売店にて、とあるもふもふに目を奪われ、東雲の袖口を引いた。

「ねえ見て。東雲の推しだよ」

「勝手に推しを増やすな」

「推しじゃん」

それは真っ白なあざらしのぬいぐるみだ。釣竿で引かれるように売店へ向かうと、もちもちで肌触りも良く、顔もキュートだ。

「ほら、かわいい!」

「……かわいいな」

両手でぬいぐるみを抱き抱えて東雲に見せると、東雲は満更でも無さそうだ。これはもう買うしかない。

今日の思い出を手に、水族館を後にした。

両手に抱えたあざらしのぬいぐるみと顔を合わせると勝手に頬が緩む。

「東雲の部屋なんも無いから、この子がインテリアのアクセントになると思うな」

「は?俺の部屋に置くのかよ」

「そうだよ?楽しかったから、今日のお礼!名前、なんにしよう」

「かんな」

「(……私なのね)」

東雲は真顔だから、冗談なのか本気なのか全く分からない。
< 119 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop