レンアイゴッコ(仮)
おかげさまで思い切り泣いた。浮気現場を抑えた時も流せなかった涙を、いとも簡単にさらけ出した。

東雲の、こういうさりげなさが年上だなあと感じる。私たちは同期でありながら東雲の方が年上だ。

ケーキを食べ終えて、歯もピカピカに磨いてソファーに寝転び、クッションを頭に敷くと一度打ち勝った睡魔が再び襲うってものだ。

「消すよー」

「いいよー」

頷くと、すぐに電気が消えた。

慣れた寝心地のソファー、安心する肌触りの毛布。

「楽だなあ」

ぽつり、糸が切れた私は、思わず、口蓋から気の抜けた感想が伝った。

「……何が」

ベッドの方から聞こえる東雲の声はほとんど寝ている。
このまま、3秒もあれば寝落ちしそうだ。

「東雲といると、楽」

「あっそ」

夢なのか現実なのか分からない、眠まなこでふたたび。


「東雲が彼氏だったら良かったのになあ」


ふにゃ、と溶けそうな声を出し、現実に戻る。一瞬弾けた眠気の泡。

……え、今、血迷った?わたし。

なんて弁明するかな、笑い飛ばそうかな……と、再び遊びに来た睡魔の中で言い訳を考えていれば。


──「じゃあ、付き合う?」



伝染したのか、東雲の世界にもイレギュラーが起きているらしい。
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