レンアイゴッコ(仮)
嫌がらせ?それとも本気?

“かんな”と呼ばれたあざらしのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめてみても分からない。

「……あのさ、東雲」

東雲を見上げる。視線が重なる。色白で華奢なのに、骨格はしっかり男のそれである。

「私、東雲の恋愛、応援してるから」

「応援?」

「東雲、好きな人いるもんね。知ってる。私に毎回付き合ってくれるくらいには東雲が面倒見がいいことも知ってるから、私、東雲が好きな人と上手くいくように応援してる!」

決意表明のように告げると、東雲の眉間の皺が深くなる。

「……何が言いたいの」

それは、つまり。

「ホテルとか、宮尾ちゃんが早とちりしただけだから……その、」

もごもごと口篭らせながら掻い摘んで話した。言いたいこともままならない。仕事上ではいくらでも言い合えるのに、手も繋ごうと言えるようになったのに、こうも意識してしまうと突然。

すると、前髪をわしゃっと撫でられた。私に伸びた手の、その先をみあげる。

「わかってるよ」

なにもかもを見透かしたような瞳。
いつもは憎たらしいと思うのに、今日はひどく安心してしまった。

「じゃあ寿司行こう」

「採用してくれたのね」

「ありがたく拝受致しました」

「東雲、お寿司だとどのネタが好きなの?」

「たまご」

「(……いちいち可愛い)」


日々は変化の繰り返しだ。現に、日毎に東雲に対する評価が変わっている。
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