レンアイゴッコ(仮)

NO KIDDING!!!

やさしい奇跡。氷が徐々に溶けていくように、ひとつひとつ過去は思い出に変わっていくこと。

やがて恋になるようにときもちをひとりじめする権利を与えられること。

いくつになっても甘いものが好きで、痛みとは仲良くなれない。

失恋が心の擦り傷ならば、私はこれまで、何枚絆創膏を張り替えたのだろう。


𓂃𓈒 ❅ *


「妃立さん、そのピザ好きすぎません?」

坂下先輩と東雲の三人で打ち合わせを兼ねた休憩を取り、ようやくご飯にありつける……!と呑気に口を開けると、あとから加わった鈴木にストップを掛けられてしまった。

ちなみにこれは、褒め言葉?

「そうかな?美味しいよ?」

「美味しいけど、妃立さんそれ週2は食べてますよ」

うーん、多分貶してるな。

「じゃあ、今日は食べないってことで良いのね」

「ありがたくいただきます!」

鈴木は椅子を東雲の隣に引き寄せると「おじゃましまーす!」と溌剌とした笑顔とともに座った。

デザインを重視させたテーブルに、大人四人は手狭だ。必然的に隣の感覚が近くなり、現に隣の東雲は無表情に拍車がかかっている。

目が合うと“なぜ呼んだ”と言わんばかりの視線を送られる。

けれど、今日は近くない。ちょうど対角に鈴木がいるので、いちばん距離は取っている。

なので、即座にスマホを取り〈離れてるよ!〉と弁明した。東雲がジャケットのポケットを探り、スマホを見る。
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