レンアイゴッコ(仮)
大したことじゃないのに何故か誇らしい気持ちで東雲を見ていると、スマホが震えた。1メートル内でメッセージを受信する。

〈なにが〉

とぼける気らしいので、すぐに反論する。

〈近いって言ったの東雲だよね?〉

〈いつの話をしてんの〉

しかし、反論は軽く煽られる。

〈飲み会の話〉

〈今は〉

〈仕事中〉

〈仕事中の餌付け禁止〉

餌付け……!?

「なに、二人でやり取りしてんの?」

「!」

ヒートアップし始めた半径1メートルの攻防は、坂下先輩の言葉で終焉を迎えた。否定するべきか、肯定するか、肯定するならば何と説明するか、慌てる。

「取引先からの注意事項を伝えていました」

しかし、歳上たる裁量か。東雲はすぐに機転を利かせるので「伝えられていました」と、すました顔でピザに手を伸ばした。

鈴木とお昼ご飯をシェアしているからか。確かに最近は鈴木に毎回おすそ分けしている。入社当初の鈴木はお弁当を持ち込んだりしていたのだけど、近頃はまったく無い。

ていうか、そもそも食べてるのかな……。

「ねえ鈴木。いつも思うけど、お昼ご飯食べてるの?」

教育係よろしく訊ねると「食べてないっす」と、鈴木は首を横に振るので、戦慄した。
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