レンアイゴッコ(仮)
「食べてないの!?お腹空くでしょ!?」

驚愕する私に、鈴木はペロッとピザを食べ終えて、話を続ける。

「節約してるんです。お金を削るんだったら、まず食費っすよね」

鈴木の価値観はゼロが100という極端なものらしい。

「お昼を抜くのは節約ってレベルを越えてる気がするけど、身体は無事なの?」

坂下先輩も私と同意見らしい。ちなみに、一応報告するけれど、東雲はまったく興味が無さそうだ。

「朝・昼を抜く分夕食はガッツリ食べてるので、至って健康です」

「(水泡に帰するってやつじゃないのかな)」

どう考えても身体に悪い。

「それに、東雲さんもほとんど食べてないじゃないですか」

鈴木は東雲に同意を求めるけれど、「……俺?」と、当の本人は、まるで他人事である。

確かに東雲の朝はブラックコーヒー、昼はほとんど栄養バーかゼリー飲料かパンという、粗雑なものだ。

「東雲の頑丈さは群を抜いてるからね」

「逆に東雲が音をあげたら相当来てる時よ」

東雲の弱音なんて、就職して五年で聞いたことないけれど。

やれやれと、女二人で呆れ返っていると、何故か鈴木は目をキラキラと輝かせ「かっけえっす!」と羨望の眼差しを東雲におくる。

「どうも」

ああ、男同士の憧れは理解できない。
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