レンアイゴッコ(仮)
「えー……こんなところにいる」
不思議に思いながらひょいとかんなを持ち上げた。もちもち&ふかふか素材の彼女は、大きさも抱き心地も案外抱き枕にちょうど良いことを知る。
「ずるいー……私、一回もここで寝たことないのに」
つぶらな瞳でみつめるあざらしのぬいぐるみにひとりごちる。私よりも後から来たかんなに、楽しみを先取りされた気分だ。だから、ベッドに寝転んではかんなを抱きしめてみる。
「(うわあ……東雲の匂いがする)」
それよりも、ソファーで眠る時よりも、ずっと近い場所に東雲が居るみたいでドキドキしちゃうから、私はやっぱりソファーでピッタリみたい。
かんなのつるんとした頭をなでなでする。さっき、東雲がしてくれたみたいに。
──……良かった。
張り詰めてぱんぱんに膨らんだ空気がしゅるると抜けていく、そんな感覚。
私の悪いところは、一人で悪い方に考え込んで、暴走しちゃうこと。
分かってるのに、冷静に話せばいいことなのに、傷つくのが怖くて、落とし所を勝手に決めて一方的に自分をまもること。それが東雲には出来ない。
──……仲直り出来てよかった。
安心感から急激に眠気が遅い、ふあ……と大きな欠伸を手で抑えた。
「(…………こんどオムライス、つくろ)」
あざらしの顔って書けるかなあ……
頭の中に黄金色のオムレツを作って、ケチャップで試し書き。イメージの中だけでも上手に描けただろうか。
遠退く意識は私に教えてくれなかった。